ラーメン屋のカウンターで小学生の客がほかの客の人数を数え、「1杯が800円で、仕入れが多分このくらいだから……」と利益の皮算用を始めた。あなたは可愛げのない子だと嫌悪感を抱くだろうか。
これは私の「教え子」による実際にあったエピソードである。このほど小学生を対象に始めた簿記教室「キッズBOKI」の生徒の話だ。
対象は小学4~6年生で、標準の初心者コースでは3日間のカリキュラムを組んでいる。簿記を覚えれば商売の成り立ちを知ることができるが、私は何も商いの英才教育をしようというのではない。お金の大切さ、尊さを学び、使い方を考える習慣を身につけるのが目的だ。
教室では、子ども自身がオーナーとして店を経営し、そこで必要な資金の出し入れや記帳などを通じて簿記を学ぶスタイルを取っている。ある児童は経営する店をケーキ屋と決め、自分の名前を入れた「激ウマ○○スイーツ」という店名をつけた。
まずは開業資金。手製の擬似マネーである「シバ紙幣」を取り出して、数え、店の金庫にれる。この際、簿記のルールに則って帳簿に記入する。しかし、自己資金だけでは開業資金は足りない。
「足りないお金はどうする?」
「銀行から借りようかな」
「友達でもないキミに貸してくれるかな?」
「たぶん、ダメだよ」
「じゃあ、誰かに紹介してもらおうか……」
こんな具合に授業を進めていく。ここでは、「商売をするのに自分でお金を貯めることもしていない人(自己資金がない人)では貸してもらえないだろう」ということから、自己資金の必要性や計画的に資金を準備することの重要性を感じてもらう。