融資を申し込む場面では、返済計画を立てさせる。子どもは、いくらのケーキを1日何個売り、月にいくら返済できるかを計算する。そこでは経費の存在を教え、「売り上げ=利益」ではないことを知る。冒頭で紹介したエピソードは、経費の意味を知った子どもが、ラーメンの値段の意味を意識した証拠である。そして「スーパーの安売りにお母さんが喜んでいたけれども、どうすれば安売りができるのかなぁ」と感じてくれれば、考える力や想像力も鍛えられる。

その後、「激ウマ○○スイーツ」は、オーナーの努力によって順調に売り上げを伸ばし、取引先からの信用もついてきた。すると、材料の仕入れは現金仕入れから月末にまとめて払う掛け仕入れができるようになる。そうなれば、ケーキのお得意様である喫茶店のマスターからの「たくさん買う代わりに掛け払いにして」という申し出にも対応できる。資金繰りを工夫して、商いを増やす、というわけだ。

授業にはクレームへの対応、売れ残りの処分なども盛り込んだ、ストーリー仕立てで展開していく。お店は食べ物を売っているだけでなく、仕入れコストやロスを考え、競合を意識しながら頑張っているんだ、ということもわかるようになっていく。

教室では、初心者コースのほか、基礎コース、発展コースも実施する。基礎コースをマスターすれば、自営業者が確定申告書を記入できるレベル、発展コースは独力で簿記検定試験に挑戦できるレベルを想定している。2009年には小学5年生、6年生の簿記検定合格の例があるようだが、わが教え子からも合格者を出せれば嬉しい。

子どもたちは、レシートを帳簿に書き写す作業も行うが、大事なのは、商品の売れ筋を掴んでどんな商品開発が効果的かを考え、どの時間帯にバイトが必要かを把握するなど、センスやコスト意識を培うことである。必要な知識をベースにして、自分なりの解釈を加えていく。そんな「考える習慣」をつけ、生き抜く力としてほしい。

(構成=高橋晴美 図版作成=ライヴ・アート)