ボルボ・カー・ジャパンの業績が絶好調だ。新車受注台数は2万台を超え、5年連続の前年越え。しかも5年前に317万円だった平均購入価格は昨年530万円となり、200万円以上も上昇している。高いのに売れているのだ。なにが変わったのか。トヨタ、日産を経て、初の日本人社長を務める木村隆之氏に聞いた――。(後編、全2回)/聞き手・構成=安井孝之
ボルボ・カー・ジャパンの木村隆之社長(撮影=プレジデントオンライン編集部)

「どんな車でも売ってみせる」という販売力

――19年間、トヨタで働かれ、何を学ばれましたか。

【木村】今は違いますが、昔は「販売のトヨタ」「技術の日産」と言われました。日産はすごい技術を開発し、車に載せている、とお客さまに訴求していたのですが、トヨタは違いました。どんな車でも売ってみせるという圧倒的な販売力がトヨタにはありました。その背景にあるのはお客さま第一主義という考え方です。

その考え方はディーラーにも徹底させていた。トヨタの強みとは大事な価値観について、口と心は一致していること、つまりSincerityがあること。分かっていること、一度決めたことを徹底的にやり続ける粘っこさ、Stickinessです。そのDNAは今の私にも残っています。

またトヨタは結果がすぐに出なくても、人づくりへの投資はずっと続けるというプロセスを大事にします。費用対効果の議論では説明しきれない価値を追求するという姿勢が大切です。それもトヨタで学びました。

――それなのにトヨタをお辞めになった。もっとトヨタで働くという選択肢はなかったのですか。

【木村】トヨタに入ってしばらくたって、世の中は組織のフラット化を目指しました。トヨタも例外ではありませんでした。日本の組織の強みだった上司がOJTで部下を育てるという仕組みが崩れました。一人の上司が面倒をみる部下がフラット化で増えたので、面倒が見切れなくなったのです。

今は仕組みを元に戻そうとしていますが、いったん崩れた仕組みに戻すのは容易ではない。私は大企業の中で人は本当に育つのだろうかと思っていますが、ビジネスをもう一度ちゃんと学ぼうと留学を目指したのです。