ボルボ・カー・ジャパンの業績が絶好調だ。新車受注台数は1996年以来22年ぶりに2万台を超え、5年連続の前年越え。しかも5年前に317万円だった平均購入価格は昨年530万円となり、200万円以上も上昇している。高いのに売れているのは、なぜか。2014年から初の日本人社長を務める木村隆之氏に聞いた――。(前編、全2回)/聞き手・構成=安井孝之
ボルボ・カー・ジャパンの木村隆之社長(撮影=プレジデントオンライン編集部)

いまのクルマに求められるのは「安全」の絶対性

――軽自動車ばかりが売れる国内の自動車市場で好調が続いているのはなぜでしょうか。

【木村】2016年から商品が大きく変わりました。16年のラージSUV「XC90」や17年に出したミディアムSUV「XC60」、18年のコンパクトSUV「XC40」、新型ワゴン「V60」と新しい商品が加わったことが大きい。XC60は17-18年のカー・オブ・ザ・イヤー,XC40は18-19年のカー・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。専門家からも高評価を得た、いいクルマが出てきたのです。デザインやプラットフォームを一新した次世代モデルが売れ行きに貢献してくれました。

――新車効果もありましたが、14年の社長就任以降の社内改革も効いたのではないですか。

【木村】私が社長に就いた14年7月ごろはひどい状況でした。全然受注は取れず、5カ月分の売り上げ台数に匹敵する4800台の在庫を抱えていました。最初の半年間は敗戦処理投手のような状態でした。でも私はボルボのブランドに期待をしていました。

「日本カー・オブ・ザ・イヤー2018-2019」を受賞したボルボのSUV「XC40」(写真提供=ボルボ)

21世紀の車に必要なものは「走る・曲がる・止まる」といった20世紀の車に求められたものではありません。もちろんその基本性能はなくてはなりませんが、安全に対する絶対性、環境への配慮、車を介してのコミュニケーション、そして素晴らしい車がライフスタイルを変えてしまうというインパクトに期待が集まるのが21世紀です。ボルボが持っているブランドイメージはそれに重なっていると信じていました。

ボルボのお客さまはドイツのプレミアム車のベンツやBMW、アウディなどのお客さまの年齢や所得とほぼ同じです。それなのに14年ごろのボルボの平均購入価格は317万円でした。ドイツ車の平均購入価格は約500万円です。とてもいいお客さまを抱えているのに安売りをしていたのです。そこを大きく変えました。