従業員の満足度を上げる大切さがわかってきた
――しかし多くのビジネスマンは社長になりたいとはあまり思わないのではないでしょうか。
【木村】私は2009年にインドネシア日産の社長になって10年がたちました。この10年を考えると自分がこれまでやりたかったことを社長としてやることに邁進してきました。しかし今は少し変わってきたと思います。
最終的にはお客さまを最優先することには変わりはないのですが、ボルボの従業員、ディーラーの従業員の満足度を上げることの大切さが重要だと考えるようになりました。「他の人が社長をやるよりも木村がやる方がハッピーだ」と従業員に思ってくれるようになることを大事にしたいのです。それが結果的にお客さまのためにもなる。そうした関係を保つことができるかが、社長業の醍醐味だと思います。
――つまり社長として全体最適を実現すること、あるいは自分のやりたいことをやるためには社長になりたい、という「自分のため」の社長業から他人をハッピーにしたいという「他人のため」の社長業になりつつあるということですね。「木村塾」にも力が入っていますね。
【木村】ボルボにとってディーラーがよりよくなってもらうことは大切ですが、お客さまにとってもとても重要なことです。45社のディーラーの次世代経営者20数人とボルボのディレクタークラス6人を加えた30人規模の塾で、次世代経営者育成プログラムです。2015年に始めました。
ディーラーも含めて経営方針を徹底させられる
――どんなことを教えていらっしゃるのですか。
【木村】自動車産業が車を売るだけの販売業からサービス業に変わり、ボルボとしてどのようなブランドビジネスに取り組むかという基本認識に始まり、ぶれてはいけない経営の軸を教えます。私がずっと話している中長期の利益志向の基本である「ES(従業員満足)→CS(顧客満足)」経営は重視しています。私が米国で学んだMBAのエッセンスも教えます。
15年に塾に集まった者たちはその後も毎年、フォローアップをしながら経営者として成長するように後押ししています。ともすれば経営者は孤独な存在です。そんな時も塾生たちはお互いにネットワークを築き、助け合っているようです。こうしたネットワークができているので、私が打ち出す経営方針もディーラーも含めて徹底できるという利点もあります。