仕事で悩んだとき、誰に相談すればいいか。映画監督のヒッチコックは、製作過程で妻の意見を積極的に取り入れていたという。既婚者は「妻に話しても仕方ない」「夫は私の仕事をよくわからないから」と発想しがちだ。なぜ名監督は妻を頼りにしたのか――。

※本稿は、教養総研『すぐに真似できる 天才たちの習慣100』(KADOKAWA)を再編集したものです。

仕事上の一大事にパートナーを頼れるか

たとえば今、あなたが転職や退職を考えているとします。そんな人生の一大事において、自分が家庭持ちで、妻や夫といったパートナーがいるという場合、あなたはそのことを相手に相談するでしょうか。

アルフレッド・ヒッチコック(1899~1980)

「サスペンス映画の巨匠」アルフレッド・ヒッチコックが、もしそのようなことで悩んでいるとしたなら、彼は真っ先に奥さんに相談していたことでしょう。なぜならヒッチコックは、映画製作の過程でことあるごとに妻のアルマに意見を聞いていたからです。

アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した『レベッカ』をはじめ、『サイコ』『鳥』『バルカン超特急』などの数々の名作を世に送り出した名監督ヒッチコック。そのスリリングな作風から、さぞかし唯我独尊を重んじる人物なのではとも思ってしまいますが、そんな彼にも、気が許せる友人や頼りになる同業者は少なからずいたでしょう。

「もっとも率直な意見を言うのは妻」

しかし、自分の作品内容について「もっとも率直な意見を語ってくれるのは妻である」とヒッチコックは常に理解し、彼女の意見をいつも積極的に取り入れることにしていたというのです。

つまり、仕事をする上で、「忖度抜きの客観的視点」を自分に提供してくれる妻をいつも頼りにしていた、というところでしょうか。

ヒッチコックの妻アルマは、かつてアシスタント・ディレクターをしていた経験があり、映画に関する知識も豊富に持ち合わせていました。1926年にヒッチコックとアルマは結婚していますが、1939年にイギリスからハリウッドへと渡って以来、アルマはいつも陰日向となって夫の映画づくりを支えていたといいます。