「定年後は妻との関係を大切に」とよく言われる。ではどうすればいいのか。シニア層のライフプランニングに詳しい大江英樹氏は「定年後に『妻をかまったら喜ぶだろう』と考えるのは、夫の勝手な思い込み。適度な距離感を保ったほうが、良い関係を築ける」と指摘する――。

※本稿は、大江英樹『定年前 50歳から始める「定活」』(朝日新書)の一部を再編集したものです。

定年後にいきなり関係がよくなるのか

※写真はイメージです(写真=iStock.com/svetikd)

「定年後に何よりも大切なのは家族、特に奥さんです。これからは奥さんとの関係を大事にして、できる限り同じ趣味を持ちなさい」

退職前のライフプランセミナーで講師からよく言われることです。私はこの言葉を聞くたびに、大きな違和感を覚えてきました。なぜなら、「これからは奥さんとの関係を大事にして」と言うけれど、今まではそうじゃなかったのか、だとしたら、定年後に関係が良くなるものなのか? と思うからです。

多くの人は「今までは仕事一筋で女房のことを構ってやれなかった」と言い訳しますが、それはあまりにも一方的です。だから定年後は妻のことを構ってやったら喜ぶだろうと考えるのは、夫の勝手な思い込みに過ぎません。

妻にしてみれば、長い間話しかけてもろくに答えてもらえず、コミュニケーションを図ろうとしても相手にしてくれない。そんな夫のことはとっくの昔にあきらめて自分のコミュニティをきちんと作っているのです。

それなのに、定年になって行くところがなくなってから、妻の世界にずけずけ入り込もうというのは、あまりにも虫が良すぎる話です。奥さんにしてみれば「いまさら何よ!」という気持ちだろうと思います。

ひと頃よく言われた「濡れ落ち葉」というのがまさにこれです。家の中でも外でも奥さんにべったりくっつこうとする。自分の居場所がないから、それを妻に求める。これではあまりにも身勝手な行動と言わざるを得ません。

「妻を旅行に誘えば喜ぶ」勝手な思い込み

身勝手な行動の一つとして、よくある話に「退職後の旅行」があります。定年になって家に帰ってきた夫が妻に「世界一周旅行」のパンフレットを渡し、「今までありがとう」と言って妻が感激する。こんな内容のコマーシャルもテレビなどで見かけることがあります。そんな広告に影響を受けて、妻を旅行に誘えば喜ぶ、と勝手に思い込んで一人で旅行を予約してきたりする。

妻にしてみれば、「別に行きたくもないものを勝手に決められても迷惑」「既に自分のスケジュールだってあるから困る」が本音でしょう。もし一緒に旅行に行きたいのなら事前によく話し合って相談すべきです。そうすれば奥さんの気持ちも多少は理解できるでしょう。「きっと喜ぶに違いない、そのためにはサプライズが一番だ!」と考えるのは明らかに勝手な思い込みと勘違いです。