勝手に地方移住を考える人も少なくない

もっとひどいのは、旅行どころか定年後に地方への移住を勝手に考えてしまうというパターンです。移住先は自分の出身地という場合もあるでしょうし、関係のない「田舎暮らしにあこがれて」という場合もあると思います。いずれにしても、これらの場合はもっと妻の意思を無視していると言わざるを得ません。でもそういう話も決して珍しい話ではないようです。

私の妻も友達から「夫が定年後に地方移住したいと勝手に言い出して困っている」という話を聞くこともあると言います。逆に奥さんから何の相談もなく、「これからは都心のほうが便利だし、友達もたくさん住んでいるから、今の家を売って都心のマンションに移ろうと思うの」と言われたらどう思いますか?「そんなこと勝手に決めるなよ」と思うはずです。でもひょっとしたら、あなたは同じことをやっているかもしれないのです。

「いや、うちはそんなことはない。妻とはコミュニケーションがちゃんととれているし、夫婦仲だって悪くない。そんな心配は無用だ」という人もいることでしょう。それならそれで大変結構なことです。でも妻とのコミュニケーションに一抹の不安を持つ人は決して少なくないはずです。そんな人の場合、定年後にどうやって妻と向き合っていけばいいのか、以下に述べます。

一番大切なのは「相手の世界を尊重すること」

「夫婦は一心同体だから同じ趣味を持ったほうが良い」という人がいますが、それは少し違うと思います。一緒に暮らしているからこそ、相手の領域に無遠慮に踏み込んでいくのは避けるべきなのです。もし自分がもともと妻と同じ趣味を持っているのであれば、それはとても良いことです。でも無理に妻に合わせて同じ趣味を持つ必要などまったくありません。

相手に合わせた趣味を持ったとしても、それが自分に合っているかどうかはわかりません。それぞれが自分の世界を持ちつつ、相手を尊重しながら好きなことをやっていけばいいのです。一番大切なのは、相手を、そして相手の世界を尊重することです。

奥さんはともかくとして、問題は自分にその世界がないことなのかもしれません。であるとすれば、定年前にどうやってその世界を作るかがとても重要です。