なぜマグロ塚は被曝マグロが埋葬地・築地にないのか
ところが、このマグロ塚、被曝マグロが埋まっている築地にはない。現在、都立「第五福竜丸展示館」(東京都江東区夢の島)の敷地隅にある。築地市場には、いきさつが書かれた金属プレートのみが設けられた。
なぜ、第五福竜丸展示館の敷地に塚が立てられたのだろう。本来は被曝マグロの埋葬地である築地市場に建立されるのが正しい祀り方ではないか。
埋葬地とマグロ塚が離れた場所にあるのは、塚の設置当初、築地市場の再整備の話が持ち上がっていたからだ。再整備計画が実行され、工事が完了するまでの仮設置場所として、第五福竜丸展示館敷地に置いたのだ。
第五福竜丸展示館によれば、塚が完成してから10年間ほどは、死亡した久保山無線長の命日に塚の前で、大石さんら関係者が集まって「マグロを食べる会」を実施していた。だが、現在はこうした弔いの行事は実施されていない。
豊洲への移転を完了させた築地市場。マグロ塚の築地への本設置や、市場の玄関に掲げられたプレートの今後の扱いについては未定だという。
本当に、五輪終了後、被曝マグロが埋められた本来の場所に、マグロ塚が恒久的に設置され、弔われる日が来るのだろうか。五輪の熱狂とともに、歴史的な負の遺産の存在がかき消されてしまわないことを心より願う次第である。