全国の僧侶がSNSなどを通じて「青切符」に猛抗議
「あの法衣(ほうえ)事件、どう思う?」
いま、全国の僧侶の間で、ある話題が持ちきりである。昨年9月、福井県で法衣(僧侶職にある人がまとう衣装)を着た40代男性の浄土真宗の僧侶が車を運転していたところ、「法衣での運転は危険」として反則金6000円の納付書を含む交通違反切符を切られたのだ。僧侶は納得がいかず、支払いを拒否。同宗派は「宗派全体に及ぶ問題。取り締まりは受け入れがたい」とし、全国の僧侶らもSNSを通じて抗議の声をあげるなど、にわかに騒ぎが大きくなってきている。
ある京都在住の知人の僧侶が、こうつぶやいた。
「京都では法衣を着て運転しても検挙されることはないみたいだけれど、これは看過できないね。私もSNSで抗議活動しようかな」
福井では、法衣を着て運転してはダメだが京都ではOK、というのはどういうことか。福井県では道路交通法施行細則に「下駄、スリッパその他運転操作に支障を及ぼすおそれのある履物または衣服を着用して車両を運転しないこと」と記載されており、これが取り締まりの根拠になっている。
「法衣で運転」福井・岩手ではNG、京都・長野はOK
この同法細則は都道府県でまちまちなのだ。
たとえば岩手県の細則では「衣服の袖、裾等によって運転の障害となるような和服等を着用して運転することを禁止」とハッキリと規定している。細則によって和装での車の運転が制限されているのは、東北を中心とした東日本に多い傾向がある。
長野県の細則には、具体的な禁止要項がないので取り締まりの対象にはなっていないという。同県に住む知人の僧侶に事情を聞いてみた。彼は地元仏教会で構成するバイク集団「坊僧族」のメンバーである。
坊僧族は例年4月、地元37の寺院で結成する松本佛教和合会が、法衣を着用して原付バイクで托鉢(たくはつ)をして回る。地元の風物詩となっているが、聞けば、法衣の下には作務衣のズボンを着用し、より安全を期しているという。とはいえ、法衣を着たまま車を運転するより、バイクのほうが危険度は高そうな気もするが、これまで取り締まりを受けたことはないという。
京都府でも特段の規定は見当たらない。それもそのはず、京都は和服の本家本元である。京都では昔から「白足袋族」という言葉があるくらいだ。「白足袋には逆らうな」と言えば、京都では寺院・神社、華道、茶道、花街関係者は影の権力を持っていて、もめるとややこしいことになることを意味する。