日本で唯一、大晦日に除夜の鐘が聞けない自治体が岐阜県にある。その自治体には寺がひとつもないからだ。京都在住の僧侶兼ジャーナリストで『仏教抹殺 なぜ明治維新は寺院を破壊したのか』を上梓した鵜飼秀徳氏は「明治初期には17の寺院があったがすべて破壊された。いわゆる『廃仏毀釈』の影響だ」という。これまで報じられてこなかった「明治150周年」の暗部とは――。

除夜の鐘がまったく響き渡らない日本唯一の自治体とは?

平成最後の年の瀬を迎えている。私は京都・嵯峨野の小刹で暮らしているが、大晦日の夜はとくに風情がある。紅白歌合戦が終わってしばらく経つと、「ゴーン」という低い鐘の音が聞こえてくる。除夜の鐘だ。午前零時を超えれば、鐘の乱れ打ちになる。天龍寺や大覚寺など地域の名刹5、6カ寺から鐘の音が響いてくる。それは、夜も寝られないほどである。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Arrlxx)

だが、除夜の鐘の音がまったく響き渡らない自治体が存在する。岐阜県の山あいにある、日本の自治体で唯一「寺のない村」、東白川村である。東白川村は明治初期、藩内寺院17カ寺すべてが打ち壊され、現在に至るまで、1カ寺たりとも復活していないのだ。