「燃える氷」の生産がエネルギーの安定供給を可能にする
この点について、09年に経済産業省が策定した「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」は、次のように述べている。
「メタンハイドレートは、よく『燃える氷』と称されているが、温度を上げる、ないしは圧力を下げるなどの変化を与えると水分子と気体のメタン分子に分離する。分離されたメタン分子は在来型天然ガスの主成分と同じものであり、メタンハイドレートは非在来型の炭化水素資源として、期待されている」
「一次エネルギー供給の8割以上を海外からの輸入に依存する我が国にとっては、炭化水素資源の一種であるメタンハイドレートが我が国領海・排他的経済水域(EEZ)・大陸棚(以下『我が国周辺海域』という。)に相当量賦存していることから、メタンハイドレートの生産技術が確立され、メタンハイドレートの実用化・商業化が実現すれば、極めてインパクトの大きい国内エネルギー資源(天然ガス資源)の供給源を持つことになる。言うまでもなく、国内(陸域・海域)に存するエネルギー供給源は、供給リスクの観点から、最も安定した供給源である。したがって、メタンハイドレートの安定的、かつ経済的な生産を可能とする技術の開発に成功することは、国内に極めて大きな炭化水素資源の供給源を持つことに等しい。そのため、メタンハイドレートの生産技術開発は、我が国へのエネルギーの安定供給確保の観点から、極めて重要な課題といえる」
メタンハイドレートの海洋産出試験は世界初の試み
日本周辺の海域には、東部南海トラフ海域(東海沖~熊野灘)を中心として、相当量のメタンハイドレートの賦存が見込まれている。
ただし、メタンハイドレートは、地層中に固体で存在するため、在来型の石油・天然ガス資源のように井戸を掘るだけでは自噴しない。
メタンハイドレート層から天然ガス(メタン)を安定的かつ経済的に生産するためには、右記の文章にもあるとおり、圧力を下げて分解するなどの、新たな生産技術の開発を行うことが必要である。
日本は、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)を中心にして、世界に先駆けてメタンハイドレートの研究開発を進めてきた。例えば07年には、メタンハイドレートの原始資源量の評価手法を確立し、東部南海トラフ海域における原始資源量を公表した(わが国天然ガス消費量の約14年分)。
また、08年には、日本とカナダとの国際共同事業として、カナダ北極圏の永久凍土地帯のメタンハイドレート層を対象とした陸上産出試験において、世界で初めて「減圧法」を用いてメタンガスを連続的に採取することに成功した。
さらに、JOGMECは、09年度から、日本周辺海域におけるメタンハイドレートの海洋産出試験に取り組んでいる。これもまた、世界で最初の試みである。
長いあいだ資源不足に悩まされてきたわが国が、「海洋資源大国」になることは、あながち夢の中の出来事だけとは限らない。
今回の鉱業法改正は、夢を現実にするための第一歩となるかもしれないのである。