次に第二次大戦の結果について。

「ロシアは『大戦の結果』として北方四島がロシア領になったと主張する。その根拠とするのが1945年の米英ソ首脳によるヤルタ協定だ」
「だが、ドイツ降伏後のソ連の対日参戦と千島列島引き渡しを示し合わせた密約に過ぎず、国際法としての拘束力はない。日本は当事国ではなく拘束される義務はない。米国も後に密約を『無効』と宣言している」

北方四島を奪ったロシアこそ国際規範違反

毎日社説は理不尽なロシアの主張にさらに反論する。

「ソ連は終戦間際に日ソ中立条約を破って北方四島に侵攻し占拠して領土拡大を試みた。これこそ国際規範に反する行動だ」
「日露の平和条約交渉は互いに『法と正義』を重視してきた。ロシアが法的な裏付けを欠く主張を続けるのなら、交渉の基盤が根底から覆る」

毎日社説の指摘を待つまでもなく、ロシアのかつての行動は国際規範違反であり、根拠のない主張を繰り返しているだけなのである。

「ラブロフ氏は先の河野太郎外相との会談でも、北方領土への『ロシアの主権』を認めるよう迫った。一方的な態度では交渉は前に進まない」

かたくななロシアにどう立ち向かったらいいのか。日本の国益を最優先にして一歩も譲らない態度を強く示すべきである。

今後の交渉で心配なのは、ロシア国内の世論である。四島を引き渡すことに反対する抗議デモまで起きている。ロシアのアンケート調査だと、8割近いロシア国民が返還に反対している。世界最大の領土を保有する国だけに、領土問題には国民が強く反応するのかもしれない。

「結果は惨憺たるもので、ロシアの増長ぶりが目に余る」

次に1月14日の日露外相会談を受けて書かれた産経新聞の1本社説(「主張」、1月16日付)を読んでみよう。産経社説は四島返還を強行に主張している。沙鴎一歩は四島返還には賛成である。

「河野太郎外相とロシアのラブロフ外相がモスクワで平和条約交渉を行った。日露首脳が昨年12月、両外相を交渉の責任者に指名して以降で初の会談だった」
「結果は惨憺たるもので、ロシアの増長ぶりが目に余る」
「日露首脳は昨年11月、日ソ共同宣言(1956年)を基礎に交渉を加速させることで合意した」
「しかし、共同宣言に基づく『2島返還』戦術の破綻は鮮明だ」
「北方四島の返還を要求するという原則に立ち返り、根本的に対露方針を立て直すべきである」

日露外相会談の結果を「惨憺たるもの」と手厳しく批判し、2島返還戦術を「破綻」と指摘する。そのうえで四島返還を求める「原則に立ち返れ」と主張する。

北方領土交渉に関し、産経社説は傾倒する安倍政権をも批判する。その姿勢はぶれない。そこが産経社説らしさだ。

しかし外交交渉は相手が一方的な主張を繰り返せば繰り返すほど、先が読みにくくなる。仮に四島返還が現実離れしてきたときに産経社説はどう対応するのだろうか。四島返還の姿勢を崩さずにいられるか。そこまで考えておくべきである。