祖父や大叔父を「完全コピー」している

安倍氏が首相に返り咲いてからちょうど6年が経過したが、その間に行ってきた外交、安保政策は祖父や大叔父を「完全コピー」していると言っても過言ではない。「ここまでやるか」というのが率直な感想である。

一つひとつの政策についての評価は相半ばする。例えば特定秘密保護法は、制定したことで日米間が機密情報を共有できるようになったとの評価があるし、法案成立前に懸念された「知る権利の侵害」は今のところ表面化していない。

「2島先行返還」の路線も最近の世論調査では支持する声が高い。

しかし、祖父や大叔父が目指した政策かどうかで政策実行の優先順位が決まっているのだとしたら、本末転倒、公私混同という批判が出てくるのも当然だ。

ただし父方の祖父、寛氏は素通り

最後に安倍氏の憧れの対象が母方の血につながる岸、佐藤の両氏に傾斜し、父方の方への思いは淡泊であることも指摘しておきたい。

父・晋太郎氏は自民党幹事長や外相を歴任し、首相まであと一歩というところで病魔に倒れた。晋太郎氏の父、つまり安倍氏の父方の祖父である寛氏は、戦争中も徹底した反骨の反戦政治家を貫いた人物として知られる。

岸氏は戦後期の代表的なタカ派政治家として知られるが、少なくとも同じ程度の「濃さ」で、ハト派だった寛氏の血を安倍氏は引いているはずだ。

それなのに安倍氏が、父や寛氏の行動を倣おうという意識は感じられない。特に安倍氏の口から寛氏の名がでることも、ほとんどないのだ。

(写真=時事通信フォト)
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