「秘密保護法」を立法したい、空母がほしい
別の外交文書には、岸氏が同年6月に訪米してダレス国務長官やラドフォード統合参謀本部議長と会談した際、米国側から秘密保護についての法制化の打診を受けていたことが記されている。岸氏は「いずれ立法措置を講じたい」と応じている。
一九六〇年、岸氏が訪米する際に備えた「日ソ間懸案の現状」という文書に、いきなり冒頭部分に「日ソ平和条約問題は、領土問題をめぐり行詰り状態になっているところ、最近わが国内に歯舞、色丹、プラスアルファをもって本問題を解決し、平和条約を締結すべきであるとの議論が1部にみられる」という記載がある。
さらに、こうした意見が出ている背景には、ソ連側に国後、択捉両島に対する「潜在主義」を認めさせるなどすれば、まずは2島返還で手を打ってもいいとの考えてあると解説している。
もうひとつ。1969年の佐藤政権下、日米両国が安全保障問題に関する協議を外務省で開いた際、米側から日本が空母を持つ可能性を問われ、当時の板谷隆一統合幕僚会議議長が「もちろん欲しいということである」と応じている。
ただし板谷氏は「空母を防衛のためだけということで説明するのにいささか難点もある。かつて、ヘリ空母を作る計画を練ったこともあったが、経費がかかりすぎるので計画をながしたこともあり、今の時点では空母は考えていない」と、時期尚早との見方も示している。
祖父、大叔父の悲願を着々とこなしている
賢明な読者の皆さんは筆者の言わんとすることに、お気づきだろう。外交文書で明らかになった祖父や大叔父の取り組みは、その時は実現しなかったが、ことごとく安倍政権下で実行に移されたり、実現が図られたりしているのだ。
安倍氏は2012年暮れに首相に返り咲いた後、13年12月、国民の知る権利を損なう可能性があるとの批判を受けながら特定秘密保護法を成立させた。
14年には日米安保体制を強固にするため、従来の憲法解釈を1部変更し、安保法制を整備。
今月19日に閣議決定した防衛大綱では、戦闘機が運用できるよう艦艇を改修する「空母」の導入方針が打ち出された。
そしてロシアのプーチン大統領との領土交渉で安倍氏は「2島プラスアルファ」を視野に活路を開こうとしている。
憲法について安倍氏は、20年までの改正憲法の施行を目ざし党内に大号令をかけている。安保法制を整備した上で、改憲を改正するという試みは、岸氏が目指した「2段階構想」とそっくりだ。