そして、面談で価格などの条件交渉を行い、OKなら「基本合意書」を締結し、財務や法務の観点から買収しても大丈夫かを買い手側が監査する「デューデリジェンス」に移る。最終的に問題がなければ、「最終契約」を含めた成約に進む。気になる成約手数料だが、売り手と買い手が直接交渉を行った場合、トランビは売買価格の3%を買い手が支払う。一方、バトンズは手数料なし。デューデリジェンスや契約の際に税理士や弁護士などのサポートを受けるのなら、別途費用が必要だ。

現役時代の取引先に、なぜ注目すべきなのか

全国の商工会議所もマッチング支援を行っており、その1つが2011年10月に設立された東京商工会議所の「東京都事業引継ぎ支援センター」だ。「現在、1000社分程度の買収ニーズがありますが、その主体は事業会社です。買い手として個人の方の登録は増えていますが、譲渡希望先のニーズとなかなかマッチせず、個人の買い手で成約に至ったケースはまだありません」とプロジェクトマネージャーの木内雅雄さんは言う。

写真=iStock.com/Robert Daly

一方、バトンズやトランビでは個人の会社買収による成功事例が、着実に積みあがっている。たとえば、バトンズでは70代半ばの男性が17年、京都・錦市場にある惣菜店を買い、外国人向けのレストランを併設したことで、月商が2500万円から4000万円へ跳ね上がった。またトランビでは、50代半ばの大手企業に勤めていたビジネスパーソンが早期退職の割増退職金と融資を原資に、年商5000万円の印刷会社を3年前に買い、順調に業績を伸ばしているそうだ。

「その会社は塾や予備校などの教材の印刷がメインで、もともと教育関係に関心を持っていた買い手の方との相性がよかったのです。会社を買った後に成功するには、経験や土地勘のある分野の会社を選択することがとても重要です」と高橋さんは言う。そして最後に、買う会社の選択の“裏技”を前出の三戸さんが紹介してくれた。

「いま勤めている会社の取引先はどうでしょう。その会社の業界内における立ち位置、技術力、経営状態などがわかっているはずです。何より相手の経営者や従業員の人柄を熟知しており、安心して買うことができます。また、素性を知っている人に買ってもらうのなら、相手側の不安感もやわらぎます」

そうやって買った会社の経営を引き継ぎ、会社の価値を高めていけば、今度は自分が売り手となって売却益という“第2の退職金”を手にすることもできるのだ。