銀行の言いなりになって退職金を預けるのはNG。いま注目の方法は「会社を買う」こと。社長としてスタートを切れば、 老後資金だけでなく、 新たなやりがいも見つかるはずだ。

「会社買収」は定年後の安定収入を確保する方法だ

「会社を買って経営をするというと、ハードルが高いという印象を抱く人がいます。確かにハードルが高いことは事実です。しかし、よくある脱サラして飲食店を起業したものの、過酷な競争環境で負け続け、初期の設備投資と運営コストであっという間に資金が枯渇してしまう“飲食業の負けパターン”にはまるよりも、実はリスクは低い。なぜなら、買った会社も設立以来、さまざまなトライ&エラーを重ねながら、エラーを起こさない仕組みが出来上がっているから。そこを母体に本当に自分のしたいことをすればいいのです」

著書の『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』がベストセラーとなっている日本創生投資代表取締役CEOの三戸政和さんが語る。

三戸さんは「人生100年時代において、定年後も安定した収入を確保する必要があります。でも、どんな会社が雇ってくれるでしょうか。マネジメント能力のある人だったら、小さな会社を買い、そこで報酬を得る選択肢だってあるのです」と続ける。三戸さんは著書のなかで、60歳からの10年間、会社を経営し、毎年1000万円の役員報酬をもらえば、税引き前収入の総額は1億円、手取りで7000万円程度にはなり、「月々20万円×30年間」くらいの生活資金を十分に得られると試算する。

エステサロン、介護……売り情報が続々

実際に、個人が会社を買おうとするのなら、まずネットを検索してみよう。そこには、個人も買える会社を仲介するサイトがいくつも現れてくる。

その1つが大手のM&A仲介会社である日本M&Aセンターのグループ会社のアンドビズが運営する「Batonz(バトンズ)」だ。「売り情報一覧」を開くと、「超急成長中のエステFCサロン1店舗」「小規模多機能型居宅介護事業(2事業所)」などの情報が続々と出てくる。同社の大山敬義社長がサイト立ち上げの経緯を説明する。

「小規模事業者のM&A(買収・合併)はコストや手間の問題で、採算が取れず、大きな課題でした。しかし、6年ほど前に米国に目を転じると、ネットによる仲介が行われていました。そこで、日本でこのモデルを活用した実証実験を行いました。そして2018年4月、成約実績100社突破を契機に、日本モデルを確立できると見て会社を設立しました。また18年10月1日、より事業者に寄り添って使いやすいサイトを目指し、バトンズをリリースしました」