まずは「財布」と「靴」にこだわる

では、いろいろな制約がある日常のなかで、どのようにして自分なりの「わがまま」を出していけばいいのでしょう。ここで、本書で提案するもっとも大切な考え方、アプローチ方法をお伝えします。

小林弘幸『自律神経を整える「わがまま」健康法』(角川新書)

それは、「身のまわりの小さいことからはじめる」ということ。自分が所属する組織や社会に対して、いきなり「わがまま」を出して生きていこうと思っても、社会というものは人間関係で成り立っているため、「わがまま」を出された相手のほうが戸惑うこともあるでしょう。そこで、まずは社会や組織、他者ではなく、自分に対して「わがまま」になればいいのです。

たとえば、「朝は4時に起きる」と決めてみる。家族が寝ていようとも、なにをしていようとも、自分は必ず4時に起きる。これって立派な「わがまま」です。要は、誰にも迷惑をかけないところから、自分なりに「わがまま」になっていけばいいのです。まずは身のまわりの小さなこだわりや決めごとをつくって、自分の型をつくっていくことからはじめてみましょう。

人間が感じるストレスは、そのほとんどが人間関係におけるストレスです。そこで、まずはそれ以外のわずかなストレスをなくしていくのが取っ掛かりになります。

それこそ、自分の持ち物に対して「わがまま」になっていくのもいいかもしれませんよ。いつも使う財布にこだわったり、仕事で履く靴にこだわったり。たとえ小さな「わがまま」でも、それをこだわって貫いていけば、思いのほか気分が軽くなっていくのを感じることができるはずです。

そして、身のまわりの小さな「わがまま」を出していくことに慣れたときにはじめて、「つきあいの飲み会にはいかない」「無駄な会議には出ない」というように、他者や組織に「わがまま」を広げていくイメージを持つといいと思います。とにかく少しずつ、ゆっくりやっていくことがポイントです。

小さなこだわりで自分を振り返る

身のまわりに、小さなこだわりや決めごとをつくっていくと、やがて大切な気づきも増えていきます。

「これって本当に必要なのだろうか?」
「ずっと習慣でやっていたけど、やらなくてもよかったのかな?」

このように、こだわりや決めごとをつくっていくと、あらためて自分を振り返ることになります。その結果、自然と無駄を省いていく方向へ進んでいければしめたもの。一つひとつは小さなことでも、人生のなかで我慢してやっていたことがどんどん減っていき、ストレスがなくなることで自律神経が整っていきます。そして、あなたの心身の健康が変わり、思考が変わり、やがて人生が変わっていくことにつながっていくのです。

変えられないことで悩むのではなく、簡単に変えられることからすぐに変えていけばいい。そんな小さな「わがまま」にこだわり続けることで、あなたの新しい人生が動いていくのです。

小林弘幸(こばやし・ひろゆき)
順天堂大学医学部教授
日本スポーツ協会公認スポーツドクター。順天堂大学大学院医学研究科(小児外科)博士課程修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学小児外科学講師・助教授を歴任。現職に至る。日本初の「便秘外来」を開設。自律神経研究の第一人者として、数多くのトップアスリートやアーティストも指導する。著書に『なぜ、「これ」は健康にいいのか?』(サンマーク文庫)、『自律神経を整える「あきらめる」健康法』(角川新書)など多数。
(写真=iStock.com)
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