些細なことで炎上しがちな昨今、ちょっとした悪気のない一言でもピンチを招いてしまう。逆に、周りを上手に動かすことも、言い方次第で可能。その模範的な解答を見てみよう。

人を傷つけがちな2つのタイプ

「ものすごく傷つくことを言われるんです。僕はどうすればいいのでしょうか」

写真=iStock.com/Klubovy

近年、精神科医の片田珠美さんは、そのような相談を受ける機会が増えたという。

職場や家庭で「おまえは価値のない人間だ」「そんなことも知らないなんてバカじゃないか」と面罵され、それにショックを受けて日常生活にも支障をきたしてしまうのだ。

相手の嫌がる言葉を平気で投げつける人は、主に2つのタイプがあると片田さんは分析する。

「1つは想像力が欠如している人。過去の成功体験や社会的な実績があって、絶対に自分は正しいと信じて疑わない。だから、自分が発した言葉を相手がどう受け止めるのか、どんな感情を抱くのか、想像できないのです。

もう1つのタイプは逆で、自分に自信がない人。たとえば学歴にコンプレックスを抱えていたら、さらに下の学歴の人をバカにして、自分が上だと認識する。自分の価値を相対的に上げるために、相手を貶めようとするんですね」

本当に人が傷つく発言であれば、責められるべきは当然ながら発言する側であるが、受け止める側が問題を抱えていることもあるという。不愉快な言葉を受け流す余裕がないのだ。

「嫌な言い方をされると、自尊心の源である自己愛が傷つき、生きる気力を失ってしまいます。ただ、不快な物言いに対して免疫をつけるためにも、傷つく経験はある程度必要。それが今は自己愛が肥大化している風潮もあって、うまく対処できない人が多いのです」

少子化の影響で親から投影された自己愛を引きずったまま成長する人が年々増えているうえ、SNSで自己愛的イメージを発信できることもあって、根拠のない万能感を抱きやすい。しかも、格差が広がる社会で不公平感や被害者意識が強まっているためか、ちょっとした言い方に過剰反応して、激怒してしまうのだという。

「自分では何気ないつもりで口にした発言でも、部下から『傷ついた。パワハラだ』と非難されようものなら、今はすかさず管理責任を問われます。自分の身を守るためにも、より想像力を働かせて、言い方に気をつけなければいけません」