やる気のない人を変えるにはどうしたらいいか。「とにかく頑張れ」と声をかけても意味がない。メンタルコーチの鈴木颯人氏は、多くのアスリートと接した経験から、「リーダーが心を尽くしても変化を見せないメンバーとは、あえて距離を置くといい。そのかわり、行動を起こしたときには徹底的に褒めることが重要だ」と説く――。

※本稿は、鈴木颯人『モチベーションを劇的に引き出す究極のメンタルコーチ術』(KADOKAWA)を再編集したものです。

興味のない部下に結果を出させるのは無理

人と向き合っていると、思うように結果が出ず、イライラすることがあるかと思います。しかし、早急に結果を求めても意味がありません。結果が出ない要因を探っていくことが大切です。

そもそも人には、さまざまな欲求があります。中でもポイントとなるのが、「所属と愛の欲求」と「承認欲求」を満たすことです。「マズローの欲求5段階説」について耳にしたことのある人もいるのではないでしょうか。

鈴木颯人『モチベーションを劇的に引き出す究極のメンタルコーチ術』(KADOKAWA)より

これは、人間の欲求が5段階に分かれていることを伝えるもので、この中でリーダーが意識すべきは、「所属と愛の欲求」と「承認欲求」です。というのも、「安全の欲求」と「生理的欲求」は、日本という国柄、それほど脅かされることはないからです。

承認欲求をまず満たす

一方、「所属と愛の欲求」は、その組織に自分が属していることを誇りに思ったり、組織の仲間から愛されているといった感覚を求めたりするもので、「承認欲求」は、一人の人間として認められる感覚を求めるものです。

この「所属と愛の欲求」と「承認欲求」が満たされると、人は、自然と一番上の「自己実現の欲求」を満たすよう努力します。よりいっそうその人らしく努力できるようになり、パフォーマンスも出しやすくなります。

ところが多くのリーダーは、「所属と愛の欲求」と「承認欲求」を満たすことなく「結果」を求めようとするのです。これでは、二段飛ばしにいきなり「自己実現の欲求」を求めるようなもの。「私はあなたに興味はないけど、とにかく頑張ってね」と言い放っているのと同じです。メンバーから不満が噴出しても不思議ではありません。

そうではなく、まずはリーダーが先の2つの欲求を満たしたうえで、メンバーを認める姿勢を見せること。その先に、自己実現と結果が見えてきます。