気まずいチームをガラリと変える方法

ある大学の女子サッカーチームのコーチングで、まさにこの「所属と愛の欲求」を満たすところからスタートしたことがあります。女性が集団になると、たいていその中に小さなグループができます。私がコーチングをしたチームも、仲良しのメンバー同士が固まって小さなグループを形成していました。

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チームの方針を話し合うミーティングでは、グループ同士遠慮して、当たりさわりのない意見しか出ていない状況。メンバー同士の仲が深まっておらず、全体で「一つのサッカーチームである」という意識を持てていなかったのです。私は、ここがチームとしてもう一歩、結果を出せていない原因だと考えました。

そこで、あるゲームを行ないました。それは、「感謝の気持ちを伝え合うゲーム」です。まず全体を2グループに分け、それぞれ1列に並び、向き合ってもらいます。そして順番に、向き合った相手に対して「感謝の言葉」を伝えていきます。1分たったら1人ずつずれて、次の人にまた同じように感謝の言葉を伝えます。

このゲームを行なった後、目に見えて、お互いの心理的な壁が崩れていくのがわかりました。さらに、最初は嫌々やっていた人も、だんだんと表情が緩んでいきました。いつの間にかお互いの心理的な壁が取り除かれた結果、少しずつプレーについて意見をかわせるようになりました。

結果を求める前に相手を認める

その背景に、自分が「メンバーの一員として認められている」という承認欲求が満たされたことで安心感が生じたという点があるのは、言うまでもありません。すでにこの女子サッカーチームは前年度のチャンピオンチームでしたが、より一体感を増したことで、2連覇することに成功しました。

チームの雰囲気が良くない場合は、「所属と愛の欲求」、そして「承認欲求」が満たされていない可能性があります。まずはこの課題をクリアするために、今お伝えしたようなゲームをしてチームとして雰囲気をつくったり、リーダー自身が率先してメンバーに感謝の言葉を伝えたりすると、空気が変わり始めます。

結果を出してほしいのなら、まず相手に与えることが大切です。二流のリーダーはすぐに相手に結果を求めますが、一流のリーダーはまず相手を認めるのです。