一番注意すべきは、頭ごなしに言うこと

そして何より重要なのは、「頭ごなしの発言を控える」ことだと、片田さんは指摘する。

「相手が自分の話を聞いてくれていれば、最後に厳しいことを言われても、受け入れることができます。でも、話に耳を傾けてもらえず、いきなり『そんな言い訳は聞くに堪えない』『根本的に意味ないんじゃないですか』と頭ごなしに突き放されると、人格さえも否定された感じを受けてしまう。これが一番いけません」

それを回避する手段として、「質問形式にして尋ねる」のがお勧めである。仕事を催促する際、「まだ終わらないのか!」と声を荒らげれば、その後、一方的に説教が続く展開になるのは想像に難くない。

しかし「例の仕事、いつ終わりそうだ?」「進展はどうなっている?」など、まず返答を求める形ならば、自然な会話が始まる。これならば自分の声を聞き入れてもらえないという強いストレスを与えずに済み、最後に苦言を呈したとしても受け入れられやすくなる。

頭ごなしに発言しないためには、相手のことを慮るのが最善だが、利他的になれないこともあるだろう。特に家族、妻に対してなどは、親しい間柄であるがゆえに感情のままに言いたいこともあるに違いない。

そういう場合は、まず深呼吸して一拍置き「ここで発言したら自分にとって損か得か」を考える。つまり現実原則に沿って考えるわけだ。すると、感情を吐き出して一瞬スッとしても、相手の恨みを買って結果的にマイナスになることに気づくので、踏みとどまって言い方を検討する余地が生まれる。

「そのために使える定番のフレーズを蓄えるのは有効ですが、一番重要なのは想像力を働かせること。視野を広げて、世の中にはいろんな考えがあり、いろんな人がいる、という多様性を受け入れるべきです。そうすれば自分の正しいと思うことを押しつけたり、すぐに相手を否定したりすることがなくなり、相手を不快にさせる発言も減るはずだと思います」