「数学嫌いが生まれる現場は学校である」
先般、朝日新聞の投書欄「声」で、高校数学の微分積分が話題になった。社会に出ても微分積分を使う機会などまったくといっていいほどないのに、苦労して学ぶ必要があるのか疑問だという60代公務員の投稿に対し、現役の中学高校の教員や高校生、元技術者らから反論が寄せられた。
私は総括のコメントを求められ、「数学嫌いが生まれる現場は学校である。数学は数千年かけてつくりあげられてきた人類の英知で、その普遍的真理は至極の芸術。学校の数学で真の魅力に触れられないのはもったいない」との考えを述べた。
数学は中学から急に抽象的になる。そして「意味は考えるな、とにかく覚えろ」といわれることが多い。数学が人によってどのような経緯でつくられてきたのか、目的も存在理由も明確に伝えられずに教えられる数学。試験と受験のためだけの数学になってしまっているのが現実だ。
「小学1年生から始める微分積分入門」という試み
私自身は、電子工学を通して数学の圧倒的リアリティを実感した。物理学、金融工学、AI(人工知能)など微分積分を使う現場は枚挙にいとまがない。実学としての数学も数学の授業の中では触れられない。これでは微分積分に興味・関心が持てないのは必然である。
私は小中高校で年間70回ほど講演している。毎月百貨店で開催している「小学生のための数学入門」という講座もあり、2018年の夏休み特集では、「小学1年生から始める微分積分入門」という試みを行った。私たちが日常の生活で実感していることが実は微分積分で説明されることを理解するには小学1年生でも早すぎない。むしろ高校生で始めることが遅い。