誰でもスピーディーにできる9の割り算
小学生のころ、私はラジオの製作に夢中だった。電卓とともに自分で回路を設計。東京・秋葉原から部品を取り寄せ、半田ごてを用いて製作に熱中していた。愛読誌は月刊「トランジスタ技術」だった。
ところで、AMラジオの周波数(kHz)はすべて「9」の倍数であることをご存じだろうか。NHK第1(594)、TBSラジオ(954)、文化放送(1134)、ニッポン放送(1242)……。このようにAMラジオ放送局の周波数は「9kHz」間隔で割り当てられている。これを「搬送波間隔」という。
おもしろいのは、この9の倍数は、そのケタのすべての和も9の倍数になる性質があるということだ。「594→5+9+4=18」「1134→1+1+3+4=9」。この事実を小学6年生のときに知った私は、なぜそうなるか気になってしかたがなく、自分で答えを見つけようと考え続けた。
その結果、ある数のすべてのケタの数を足して出てきた数は、もとの数を「9」で割った余りだと気づいた。余りがわかるということは、つまり商もわかるのではないか。そう考え、さらに独自に研究を続けた。そうして、ある数を9で割ったときの答えを簡単に導く方法を編み出した。小学6年生だった私は狂喜乱舞した。
それが図の桜井式計算法だ。これを使えば、「9」の割り算は一瞬でできる。2ケタの割り算の場合を見てみよう。「42÷9=?」は一般に筆算で解くが、桜井式では2ステップですむ。(1)割られる数(42)の十の位が商になり、(2)割られる数(42)の十の位と一の位の和(4+2)が余り(6)になる。
この桜井式は3ケタでも同じだ。「152÷9=?」は、(1)割られる数(152)の百の位(1)が、商の十の位になり、(2)割られる数(152)の百の位と十の位の和(1+5=6)が商の一の位になり、(3)割られる数(152)の各位の和(1+5+2=8)が余りになる。つまり答えは「16余り8」である。