ここまで読まれて気づいたことがないだろうか。桜井式計算法では、割り算なのに掛け算と引き算を使っていないのだ。足し算だけで、割り算が可能なのである。しかも筆算はタテに書いていくが、桜井式はヨコ一列で簡単だ。

なお、上記の2ケタと3ケタの例題は、いずれも割られる数のケタの和が「9」未満だった。ケタの和が9以上だとどうなるか。たとえば、「769÷9=?」は、商の十の位は「7」、一の位は「7+6=13」、余りは「7+6+9=22」。

そこで13の1を商の十の位に繰り上げて「7+1=8」とし、商を83とする。一方、余りも22と9以上なので、これをもう1度計算すると、「2、余りは4」となる。その商の2を繰り上げて先ほどの商(83)に加え、最終的な答えは「85余り4」となる。

この桜井式計算法は、多くの例題(パターン)のなかから共通する法則(ルール)として見つけ出され、最終的に論証を経て完成したものだ。パターンのなかからルールを発見することこそ人間に与えられた天性である。これはビジネスにも通じるのではないか。

桜井 進
サイエンスナビゲーター
1968年生まれ。東京工業大学理学部数学科卒業、同大学大学院修了。2000年、日本で初めてのサイエンスナビゲーターとして活動を開始。『面白くて眠れなくなる数学』など著書多数。