PANA=写真
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JR東海代表取締役社長 山田佳臣(やまだ・よしおみ)
1949年、東京都生まれ。東京大学法学部卒業。71年旧国鉄入社。87年JR東海入社。人事部長、常務、専務を経て、2004年副社長。09年6月から社長補佐なども兼務。2010年4月1日付で社長就任。


 

JR東海にとっては、2010年は特別な年になりそうだ。新幹線の海外売り込みを積極的に展開する営業戦略をスタートさせる一方で、念願だったリニア新幹線建設計画の巨大プロジェクトに本格着手した。

これらの構想を実現させるために、4月に新社長に就任したのが山田佳臣氏だ。同社に詳しい関係者は、「山田さんは、葛西敬之会長に対して、面と向かって異議を唱えられる唯一の人。貴重な存在だ」と語る。

たとえば、葛西会長が「リニア建設計画では完成した区間からの部分開業もありうる」と発言したときも「採算が合わない」とブレーキをかける。国鉄改革を主導した3人組の一人といわれる葛西会長の強烈なリーダーシップを実現する実務家として、山田社長の人望は厚い。親分肌で、彼の周囲にはいつも人が集まるという。

リニア中央新幹線は、同社が5兆円の資金調達を行って独自開発する方向性を打ち出しているが、この巨大プロジェクトを実現路線に乗せるのが、山田社長の役割とも言える。

新幹線の海外売り込みも、政府主導で攻勢をかける独や仏、中国に比べて、日本は劣勢を強いられていた。最近こそ、前原誠司国土交通相が米国やベトナムに自ら乗り込んで、新幹線技術をPRしているが情勢は厳しい。

就任間もない中で、山田社長は新幹線の海外輸出促進を目指して商社や車両メーカーとの連携強化を示すなど、従来とは異なる経営戦略を矢継ぎ早に打ち出している。新幹線の収益にいつまでも依存できない同社にとって、山田社長の就任は今後の同社の方向性を決める大きな意味を持つ。最強コンビともいわれる葛西会長との二人三脚は、まだスタートしたばかりだが、その可能性に期待が集まる。

(PANA=写真)