日本は霞が関と金融機関の人材交流が少ない
【田原】いまフィンテックが注目されていますが、金融はガチガチの規制業界。やりづらさはないですか。
【柴山】規制の観点から問題は感じていません。近年はスタートアップに流れる資金も潤沢です。唯一のハードルになっているのは人材。アメリカは政府と金融機関、さらにIT系の人材交流が盛んで、私がマッキンゼーで関わったプロジェクトにも元金融庁長官がいました。だから新しいサービスをつくるときに、規制上はどうかという議論がスムーズにできる。一方、日本は霞が関と金融機関でさえ人材の交流が少ない。ましてやネット系になると、ほぼ断絶しています。それを超えていく人材が増えてくれば、フィンテックはもっと伸びると思います。
【田原】まさに柴山さんみたいな人が増えればいいんだよね。頑張ってください。
柴山さんから田原さんへの質問
Q. 朝令暮改したら、リーダーは信頼をなくしますか?
僕は松下幸之助さんや盛田昭夫さん、本田宗一郎さんといった経営者に取材してきましたが、彼らは朝令暮改を平気でやっていました。現場は振り回されたかもしれませんが、それでも従業員から支持されていたのは、根底にあるものがブレなかったからです。たとえば幸之助さんは「目的は従業員を幸せにすること」と言っていた。経営哲学は不変だから、具体論が変わっても信用されるのです。
会社を取り巻く環境はつねに変わるのに、いまの経営者は失敗を恐れて朝令暮改をしなすぎます。かつての名門企業がダメになったのは、経営者が守りの経営に徹しているから。創業者たちの精神を思い出してほしいですね。
田原総一朗の遺言:根っこに哲学があればいい!
(構成=村上 敬 撮影=枦木 功)