スーツをやめて、ユニクロのジーンズをはいたワケ
【田原】さて、起業するにあたって何から始めましたか。
【柴山】マッキンゼー出身ですから、最初はパワーポイントで資料をつくって、ネット系のさまざまな会社に相談へ行きました。みなさん「すごいですね。応援します」とは言ってくださいますが、現実には何も起きない。どうしたものかと悩んでいるときに、一緒にランチを食べた高校の後輩から「柴山さん、スーツはジーンズの敵ですよ。いかにも財務省やマッキンゼーでございますという格好で、エンジニアが一緒に働きたくなると思いますか」と指摘されました。たしかにその通りで、そもそも自分はエンジニアの気持ちや考えがまったくわかってなかった。そこでユニクロに行ってジーンズを買い、プログラミングの学校に入学しました。自分でいまのアプリのプロトタイプをつくってみたら、デザイナーやエンジニアが何人か関心を示して手伝ってくれるようになりました。
【田原】サービスを具体的に聞きましょう。最初に断っておくと、税務署から「インサイダー取引を疑われるから株はやらないほうがいい」と言われているので、僕は資産運用をまったくやってない。そんな僕でもわかるように教えてください。ウェルスナビはどんなサービスですか?
【柴山】お客様の資産をアルゴリズムに基づいて自動で運用します。運用は、長期・積立・分散です。
【田原】長期・積立・分散だと利回りがいいんですか。
【柴山】ウェルスナビは約50カ国1万1000銘柄に分散投資しています。これは世界経済全体に投資しているようなものです。経済学者のピケティは「r」(資本のリターン)は「g」(経済成長率)を上回ることを実証しましたが、だとすると、世界全体に投資をすれば、世界経済の成長率を上回るリターンを得られることになる。世界銀行やIMFは成長率3~4%と言っているので、分散投資によって4~6%くらいのリターンが期待できるわけです。もちろん短期で見れば、リーマンショックのときのようにマイナス成長になることもありえます。だから中長期で投資をします。
【田原】なるほど。ウェルスナビはロボットで資産運用するのが特徴ですね。人間と比べて、どのようなメリットがあるんですか。
【柴山】人が資産運用をしてうまくいかないのは、感情の罠にはまったことが原因である場合が多いです。値上がりしすぎている資産を売り、値下がりしすぎた資産を追加購入して全体のバランスを取ることをリバランスと言いますが、人間は感情に左右されて逆の行動をとりがちです。