働く世代を中心に人気が高まるAI・ロボットによる全自動投資サービス。「ウェルスナビ」は約8万人が利用し、預かり資産は900億円を超える。東大、財務省、マッキンゼーを経て起業した経営者の考える資産運用の未来とは──。

財務官僚を辞めた最大の理由

【田原】柴山さんは大学を卒業して大蔵省、いまの財務省にお入りになる。財務省は省庁の中でも格が高いと言われています。どうしてお選びに?

【柴山】大学時代は人生の進路に迷いがありました。2年生のときにはコンサルティング会社のベイン、3年生のときにはマッキンゼーでインターンをしました。でも、自分には合わないなと。大学で法律を勉強していると、社会全体の課題をどう解決するのかに関心が向かいます。そのせいか、特定の事業を伸ばすコンサルの仕事に興味が持てなかったのです。4年生になると長野の農家でインターンをしたり、学者になることを考えたりして、迷走していました。

【田原】大学院の選択肢はなかった?

【柴山】考えました。そう思って教授に相談したら「研究室に残るか、大蔵省に行くか、どちらかにしなさい」と。悩んだ揚げ句、大学から見える世界と政府の中から見える現実の世界はギャップがあって、後者から見える世界を見たいと考え、大蔵省に入りました。当時は入省3、4年目に海外に出してもらえることも魅力でしたね。実際、私もハーバードのロースクールに留学させてもらいました。

【田原】財務省ではどんな仕事を?

【柴山】最初は不良債権処理です。留学を挟んで、貿易交渉や経済交渉を担当していました。それから交換人事でイギリスの財務省に出向です。

【田原】イギリスでは何を?

【柴山】イギリスには2年いました。私は保健省の担当で、社会保障の予算をつくっていました。

【田原】向こうで奥様と結婚されたそうですね。イギリスの方?

【柴山】いえ、アメリカ人です。ハーバードで知り合って、日本で付き合い始め、私が渡英した半年後にスーツケースひとつでロンドンにやってきて、結婚しました。

【田原】帰国は2008年。

【柴山】日本に帰ってきてからは、新しい税制度をつくる担当になりました。たとえば炭素税を考えたり、NISA制度を設計したり。財務省時代では、もっとも充実していた時期だったかもしれません。