平成という時代は「暗黒の中世のよう」と語る古谷経衡氏が日本の“道徳自警団”について執筆した。「道徳自警団とは犯罪行為ではないことについて、自身の価値観に基づきクレームする集団」と古谷氏は定義する。彼らは「不倫」や「タバコのポイ捨て」といった不道徳を見つけてはネットで炎上させるという。

「自警団はディベートなどの訓練をしていないから、難しい社会問題や政治の話題でも道徳的か否かという単純で矮小な判断しかできない」。本来は気にしなくてもいいというが「世間は彼らの声に萎縮しすぎている。テレビ局も自警団を恐れて放送内容を変えたり、謝罪する必要がないのに謝罪したりと、この国で起きていることは“中世の魔女狩り”に近いですよ」と嘆く。

古谷氏は自警団の振り払い方について「自分を貫くこと、耐え忍ぶこと」と話す。「不倫疑惑を報じられた山尾志桜里議員と宮崎謙介元議員の違いは何か。そもそも政治家の資質には関係ない話ですが、宮崎氏が批判に負け辞職したのに対し、耐え抜いた山尾氏は3選を果たしました」

かくいう私も、かつて年上男性から受けた性被害を告発した際、記者会見で着ていた服について「胸元が開きすぎ」と批判を受けた。とある女性からは「不用意に男性と飲みにいった女性に責任がある」との手紙も頂いた。

古谷氏も金髪ロン毛の風貌を指摘され「見た目のせいで話に説得力がない」などと言われるという。「逆にスーツで短髪であれば、その人の発言は何でも信じるのか」と問いかける。「人生は楽しむためにあり、我慢するためにあるのではない」。批判を恐れず自分のスタイルで突き進む、彼の言葉が印象的だった。

古谷経衡(ふるや・つねひら)
文筆家
1982年、札幌市生まれ。立命館大学文学部卒。一般社団法人日本ペンクラブ正会員。ネット保守、社会、政治、サブカルチャーといった様々なテーマで執筆活動をしている。著書に『「意識高い系」の研究』『日本を蝕む「極論」の正体』など多数。愛猫家。
(撮影=伊藤詩織)
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