森友学園への国有地売却を巡って、安倍政権が窮地に陥っている。問題は公文書改竄にも波及しているが、事の発端は首相夫人の安倍昭恵氏が、学園がつくる予定だった小学校の名誉校長に就任したことだった。元「週刊現代」編集長の元木昌彦氏は、「なぜ昭恵氏は『ワーストレディ』と呼ばれるまでになったのか」と安倍夫婦の歴史を振り返る――。
2017年4月15日、首相主催の「桜を見る会」で招待客らと写真に納まる安倍晋三首相と昭恵夫人。(写真=EPA/時事通信フォト)

桐野夏生の小説『OUT』のような気持ち

安倍晋三首相に会ったら一つだけ聞いてみたいことがある。

「あなたは妻を殺したいと思ったことがあるか?」

卑近な例で申し訳ないが、私は何度かカミさんを殺したいと思ったことがある。カミさんのほうはもっと多いはずだ。

週刊誌がよくやる人妻匿名座談会で、「夫と別れたいと思ったことはないが、殺したいと思ったことは何度かある」という本音が飛び出すことがある。

もちろん愛情からではない。こんな男と結婚して、自分の人生をめちゃめちゃにされた落とし前を、離婚なんて形で済まそうなんて絶対許せない。桐野夏生の小説『OUT』のように、殺して切り刻んでやらなければ腹の虫が治まらない、そういう思いからなのではあるまいか。

何十年も一緒に暮らしていても、男と女は決して分かり合えない“闇”をお互い抱えているものである。

森友問題の発端は「名誉校長」への就任だった

今や安倍政権を崩壊させかねない森友学園問題だが、元はといえば、安倍昭恵夫人が籠池泰典理事長(当時)の運営する幼稚園の教育方針、教育勅語の朗誦、自衛隊への慰問、伊勢神宮参拝といった戦前回帰教育に感銘を受け、籠池がつくる予定の神道系小学校の名誉校長に就任したことから始まった。

通称アッキーといわれる昭恵をもじって、安倍のアッキーレス腱、アッキード事件、アッキーゲート、アベノリスクなどと揶揄されているが、本稿は、その問題を追及するものではない。

晋三と昭恵という夫婦の歴史をたどりながら、なぜ彼女が、稀代の悪女、ファーストレディならぬワーストレディとまでいわれるようになったのかを考察してみたい。

電通では「宴会部長」として名をはせていた

晋三は、岸信介を祖父に、安倍晋太郎を父に持つ政治家の家系であることはいうまでもない。岸、晋太郎はともに東大卒だが、晋三は小学校から大学まで私立の成蹊で、卒業後は神戸製鋼所に入社している。

その後、外務大臣に就任していた父・晋太郎の下で秘書官を務めるようになる。

昭恵の両親は、母は森永製菓創業者の娘・恵美子、父は同社の番頭で後に社長になった松崎昭雄である。

聖心女子学院初等科・中等科・高等科を経て、聖心女子系列の専門学校を卒業。勉強はできずに、専門学校ではもっぱら「飲み会要員」だった。

良家の子女がコネで入ることが多い電通に入社。新聞雑誌局に配属されたが、仕事といえば、お茶くみばかりで、何より楽しかったのはランチタイムとアフターファイブで、今日の昼ごはんは何を食べようか、今度の飲み会は誰を誘おうかとか、そんなことばかり考えていたと自著『「私」を生きる』に綴っている。

当時の人気ディスコ・ジュリアナ東京では、ロングヘアにボディコン姿で、夜な夜な踊る昭恵の姿が見られ、電通では「宴会部長」として名をはせていたそうだ。