全国紙すべてが社説に取り上げた
超エリート官僚である財務省の福田淳一事務次官の辞任表明が、テレビや週刊誌、そして新聞で大きく取り上げられた。
「おっぱい触っていい?」「手縛っていい?」「キスしていい?」「浮気しようね」
福田氏はこんなあぜんとさせられるような言葉を都内のバーで何度も繰り返しながらテレビ朝日の女性記者に迫った。被害を受けた女性記者は彼女だけではないという。
財務省の事務方トップと取材記者。記者にとっては仕事である。しかし福田氏にとっては大きく違っていた。
女性記者は1年ほど前から数回、取材目的で福田次官と会食していたが、その度にセクハラ発言を浴びた。そのため「身を守ろう」と会話を録音していた。週刊新潮のニュースサイトで音声データもアップされた。
週刊新潮(4月12日発売)がセクハラ行為を書いた後も「女性記者と会食した覚えもない」と全面否定していたが、更迭された。しかしその後も「あんなひどい会話をした記憶はない」とセクハラ行為を否定している。
沙鴎一歩は、週刊新潮で福田次官のセクハラ行為が報じられた当初、この話題を新聞の社説が取り上げることはないだろうと考えていた。
だが朝日新聞が4月17日付の社説で「財務次官問題 混乱は深まるばかりだ」を掲載したのを皮切りに結局、全国紙すべてが社説で論陣を張った。
それだけ福田氏の行為がひどかったことになるのだが、いまの時代、「女性を侮ると、自らの生命を失う」という目に遭う。セクハラ問題の本質を福田氏はまったく理解していない。
福田氏も財務省も国民の目をあざむこうと懸命だ
4月17日付の朝日社説は「財務省はきのう、部下である官房長らの聴取に対し、福田氏は疑惑を否定したと発表した。だが、与党内からも辞任を求める声が上がっており、混乱は収まりそうにない」と指摘し、「この間、福田氏は記者団から逃げ回り、取材にまともに答えようとしなかった。報道が事実と異なるのであれば、ただちに反論できたはずなのに、なぜそうしなかったのか」と書く。
福田氏は最初から否定の構えで、財務省の事務方トップとしていまだにまともな記者会見も行っていない。財務省もひどい。部下の官房長による聴取では結果が見えている。福田氏、財務省ともども国民の目をあざむこうと懸命なのだ。すべてうやむやにしようと企んでいた。
朝日社説は「麻生財務相の対応の鈍さ、危機感の薄さにも驚く」とも書く。
「報道当日、国会で追及されると、本人から簡単な報告があったとしたうえで、『十分な反省があったと思うので、それ以上聞くつもりはない』と、事実確認すらしない考えを示した」
「翌日の記者会見では、『事実だとするなら、それはセクハラという意味ではアウトだ』との認識を示しながら、『本人の長い間の実績等々を踏まえれば、能力に欠けるとは判断していない』と擁護した」
「反省があった」「事実だとするなら」「長い間の実績」という言葉を使って発言するところなど、麻生氏もセクハラ行為の問題性をまったく理解していなかった。