4月13日、毎日新聞が他紙に先がけて「佐川氏 立件見送りへ」という特ダネを書いた。大阪地検は、財務省の決裁文書改竄をめぐり、前国税庁長官の佐川宣寿氏の立件を見送る方針だという。なぜ安倍政権に批判的な毎日が、こうした記事を1面に載せたのか。その裏には、世論に火を点けようという検察の思惑があるようだ――。
4月13日付の毎日新聞(東京本社14版)の1面。肩(左上端)は「佐川氏 立件見送りへ」だった。

「模様だ」は検察担当記者の書く記事

最近、読んだ記事が気になっている。4月13日付の毎日新聞朝刊(東京本社発行)だ。1面の肩(※)扱いで、「佐川氏 立件見送りへ」と大きなたて見出しが付いていた。

※左上端の記事を指す新聞社の専門用語。右上端の頭に次いで重要な扱いとされる。

記事は「学校法人『森友学園』(大阪市)への国有地売却を巡り、財務省の決裁文書が改ざんされた問題で、大阪地検特捜部は、前国税庁長官の佐川宣寿氏(60)ら同省職員らの立件を見送る方針を固めた模様だ」と書き出し、「捜査関係者が明らかにした」と続ける。特ダネだ。

記事に「模様だ」とあるところをみると、検察担当記者が書いた記事だ。検察関連の取材では、30年以上も前から末尾に「模様」と書くことが検察と担当記者の間で暗黙の了解になっている。そうしてボカさないと、検察がうるさいからだ。

毎日のスタンスに反する記事なのに……

毎日の記事は「捜査関係者が明らかにした」とまで書き、あえてニュースソースを明らかにしている。この捜査関係者とは、大阪地検の幹部だろう。

記事は指摘する。

「決裁文書から売却経緯などが削除されたが文書の趣旨は変わっておらず、特捜部は、告発状が出されている虚偽公文書作成などの容疑で刑事責任を問うことは困難との見方を強めている。今後、佐川氏から事情を聴いたうえで上級庁と最終協議する」

安倍政権を擁護する読売新聞が書くなら分かるが、「立件見送り」という社のスタンスに反するニュースをなぜ、毎日新聞が1面で大きく扱ったのだろう。

8億円値引きの疑惑は未解明

そう思って下にある関連記事に目を移すと、「疑惑根幹 未解明のまま」との見出しを付けた記事が添えられ、こう指摘している。

「森友学園問題は、『なぜ8億円も値引きされたのか』という疑惑の根幹は未解明のままで、一連の問題が決着したわけではない」
「決裁文書の改ざんについても、関わった職員や指示系統は分かっていない」

この指摘はもっともであり、毎日新聞の愛読者も納得するだろう。ただし、厳しい見方をすると、添え記事は単なる言い訳に過ぎず、そんな言い訳をするなら最初から「佐川氏 立件見送りへ」という記事など書かなければいいのだ。