いざというとき、自分の身を守ってくれるものは何か。その筆頭は「法律」だ。「プレジデント」(2017年10月16日号)の「法律特集」では、8つの「身近なトラブル」について解説した。第5回は「危ないお泊まり出張」について――。(全8回)
男女の仲から一転、訴えられてしまう理由
酒を飲んで盛り上がり、同意のうえで一夜をともにした女性から訴えられる――。こうして準強制性交等罪(旧罪名・準強姦罪)に問われるケースは実際にあります。
それは、女性が素面に戻ったときに起こります。ゆきずりの相手と関係を結ぶ、そのことを認めたがらない女性は、ごく一部ですが、一定数いる。彼女たちは、我に返ったときに「私に非はない。相手が悪い、許せない」と男性に強要されたとして被害届を出し、自らを納得させようとするのです。
いかなる理由で訴えられたとしても、密室の中で行われたことが同意のうえかどうかを証明するのは難しい。結局は、どちらの主張が合理的かとの判断になってしまいます。さらに言えば警察は「あえて勇気を出して被害届を出した女性の主張は信用できる」と考える傾向にある。どうにかして、女性が正気で同意があったことを男性側が証明しなければ事実上、罪を免れることは難しくなります。
では、どうすればいいか。女性が自分の足で歩いてホテルに一緒に入ったことなどが証明できればいいが、なかなか難しい。女性との会話を録音していれば証拠になる可能性はあるが、普通録音などしていないでしょう。仮に録音をしていたとしても「なぜ録音していたのか」が逆に問題になることもあります。
となると、細かい事実を積み上げていくしかありません。正攻法は、ホテルに入ってから一緒にコーヒーを飲んだ、ビデオを見た、あるいは翌朝一緒に朝食を食べた、など女性が同意していたと思われる状況を主張することです。そこに矛盾がなければ警察も女性の主張を疑いはじめます。
その際に、記憶が曖昧なことを言うのは厳禁です。事実関係に矛盾が生じてしまうと、それ以外の主張も信用されなくなります。