いざというとき、自分の身を守ってくれるものは何か。その筆頭は「法律」だ。「プレジデント」(2017年10月16日号)の「法律特集」では、8つの「身近なトラブル」について解説した。第4回は「最悪の警察官対応」について――。(全8回)
職務質問は任意だが簡単に断れると考えるのは早計
「鞄の中を見せてもらえませんか」と街中で警察官に呼び止められて、職務質問される。そのとき、どう対応すればよいのかと、不安に感じる人は多いだろう。鞄の中にキーホルダーナイフなど、犯罪とのかかわりを疑われかねないものが入っているときには、職務質問を拒否できないものかと感じることもあるだろう。
職務質問の法的根拠を引用すると、警察官職務執行法二条1項に、警察官は「異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある」人を「停止させて質問することができる」とある。ただ、同条3項に「その意に反して警察署、派出所若しくは駐在所に連行され、若しくは答弁を強要されることはない」とあり、あくまでも職務質問は任意である。
だが、任意なら簡単に断れると考えるのは早計だ。あっさりと拒否できると職務質問の意味がないので、判例上、状況によっては、警察官には肩や腕に手をかけて止めるなど有形力の行使が認められている。それを振りほどいてまで立ち去ろうとすれば、それは「異常な挙動」とみなされ、ますます警察官に「疑うに足りる相当な理由」を与えてしまうことになる。1度目をつけられたら、断るのは至難の業だ。