いざというとき、自分の身を守ってくれるものは何か。その筆頭は「法律」だ。「プレジデント」(2017年10月16日号)の「法律特集」では、8つの「身近なトラブル」について解説した。第6回は「政治家への寄付ルール」について――。(全8回)
政治資金収支報告書はネットで調べられる
政治資金規正法(以下、規正法)は、政治資金の流れを公開し、寄付などの資金の授受に制限を設けることで、政治活動の透明性、公平性を確保しようというものです。規正法では、寄付の量的・質的制限を設けています。例えば、個人が政党に寄付できる総額は年間2000万円以内、個人が同一の政治団体に対して行う寄付は年間150万円以内に限られています。質的制限として、外国人、外国法人は寄付できません。
寄付を受ける政治家側は、献金をした人の住所、氏名、金額、職業などを政治資金収支報告書に記載し、開示しなければなりません。記載義務は、後援会など政治家個人の政治団体すべてが対象になります。
しかし、1年で5万円以下の寄付者や20万円以下の政治資金パーティーの支払者などについては収支報告書に記載をしなくてよいことになっています。ただし、寄付金の控除を受けた場合には記載されます。つまり、5万円以下で寄付控除を受けなければ、他人に知られることなく政治家の応援ができます。
すべての寄付者が記載されないことを問題だという声もありますが、政治資金収支報告書の内容はインターネットで調べられますので、すべての寄付者を記載すると、住所まで知られたくないと献金を躊躇する人が出てくるかもしれません。
今の規正法では、政治活動の公明と公正を確保するには十分ではないという指摘もあります。例えば、企業・団体献金は政党本部、政党の政治資金団体、政党支部に限られています。公職の候補者個人はもちろん、政治家の資金管理団体にも献金はできません。ところが政党支部の代表は、そこを選挙区とする国会議員が兼ね、資金も管理していることがほとんどです。そのため政党支部が企業・団体献金禁止の抜け道として使われていると言われています。