相撲の当事者だけでなく僕ら国民も「暴力」を見逃していた
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1月4日、貴乃花親方が日本相撲協会の理事を解任された。巡業部長という重い地位に就いているにもかかわらず協会への報告義務を果たさず、公益法人役員の忠実義務に大きく違反しているということが理由らしい。
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貴乃花親方が協会への報告を怠ったという点は処分の対象になり得る。ただし、問題解決の本質は、それは怠ったのか、それともそうせざるを得ない理由があったのかということで、ここをきちんと検証すべきなんだ。
そしてその検証方法は、相撲協会の評議会や理事会がやってはいけない。第三者判断が必要になる。もちろん第三者が最終決定するわけではないけど、とりあえず第三者に検証してもらって、意見をもらう必要がある。
それは相撲協会自身が、完全に当事者能力を失っているからなんだ。だって、相撲界における暴力体質は、2007年6月の時津風部屋における新弟子リンチ死事件で大問題になって、徹底した体質改善が叫ばれた。にもかかわらず、今回の事件が起きたんだからね。
今回の貴ノ岩関が暴行を受けた事件にあたって、貴乃花親方の報告懈怠を論じると同時に、貴乃花親方だけでなく、評議会や理事会という相撲協会の執行部、すなわち会社でいうところの経営陣全体の責任も問わなければならない。八角理事長や白鵬関が減給処分などになったけど、彼らを一時的に処分しただけでは相撲協会の抜本的体質改善にはつながらない。今回の相撲協会の対応は、経営陣全体の責任はほどほどに、貴乃花親方に全責任を押し付けるような形になっているように思える。
相撲の世界において、指導で手を上げるというのは何となく許されている雰囲気なんだろう。だって相撲自体がルールに基づいた「暴力」であって、僕も稽古を見に行ったことがあるけど、「暴力的」指導は普通に行われていた。そして、相撲の当事者だけでなく、僕ら観ている側も、相撲の世界ではそれが当たり前なんだという認識で、誰も異議を口にしなかった。
相撲の当事者だけでなく、国民全体が、相撲界のある種の暴力的体質を容認していたようなところがある。
しかし、この状況を変えなければならないというのが時代の趨勢だ。他のスポーツ団体はいち早く、暴力的指導の根絶に取り組み始めた。
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