手軽に情報発信できるツイッターだが、1度のツイートで他人に大きな被害を与えてしまうおそれもある。ジャーナリストの岩上安身氏を訴えた事例をもとに、橋下徹弁護士が「名誉棄損にならない情報発信法」を指南する。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(2月6日配信)より、抜粋記事をお届けします――。

ツイッターで許される表現はどこまでか

現在岩上安身氏に対しての訴訟が継続している。僕は、法律に則って大阪で裁判を起こしたが、岩上氏が色々な理由を付けて東京で裁判をやるべきだと裁判所に申立てをした。結果は、岩上氏の申立ては却下。大阪で裁判が行われることになった。当たり前だ。こちらは被害者なんだから。

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写真=iStock.com/Georgijevic

僕が訴えた理由は、岩上氏が「橋下知事は府職員を自殺に追い込んだ」という他人のツイートをリツイートしたことによる。岩上氏は一定の期間の後、そのリツイートを取り消していた。そして、岩上氏は「リツイートしただけなのに(しかも取り消し済み)、抗議や言論による反論なくいきなり訴えるなんて、言論を委縮させる不当訴訟だ」というような反論をしている。

自由で民主的な国家においては、表現の自由は最大限に保障されなければならない。表現活動を規制したり、表現活動にプレッシャーをかけたりすることは、表現活動を委縮させるので細心の注意を払わなければならない。これは当然の前提だ。

しかし表現の自由が無制約に保障されるわけではなく、やはり他人を傷つけるような表現は一定規制される。民事においては名誉棄損に基づく損害賠償責任(民法709条)としてお金を支払わされ、刑事においては名誉棄損罪として刑罰(刑法230条)を受ける。

だから、どこまでの表現が許されて、どこからの表現が許されないのか。ここを知っているのと知らないのとでは、天と地ほどの大違いなんだよね。

この境界線を知っていれば、アウトにならない範囲で堂々と表現ができる。境界線を知らない人は、アウトになることにびくびくしなければならないし、アウトの表現をしてしまってから後悔する。

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ネット社会では、国民一人一人が発信する力を持つことになった。ブログ、ツイッターなどのソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)で、国民一人一人が果敢に情報発信している。既存のメディアが情報発信力を独占していた時代と比べて、大変すばらしい世の中になったと思う。既存のメディアは既得権にあぐらをかいているわけにはいかず、尻に火が付いた。国民に信頼されるように努力しなければならなくなったし、何よりも既存のメディアのおかしな情報発信が国民一人一人によって正されるようになった。すなわち既存のメディアも国民に監視されるようになったんだよね。

ネット社会において、僕も政治家としてツイッターという強力な武器を与えてもらったよ。これまで政治家は既存のメディアに批判されたら、完全に言われっぱなしの状態だった。勘違いした既存のメディアの記者連中には、俺様の力でお前たち政治家の政治生命はなんとでもなるんだ、という態度を露骨に出してきた奴も結構いたからね。

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