いざというとき、自分の身を守ってくれるものは何か。その筆頭は「法律」だ。「プレジデント」(2017年10月16日号)の「法律特集」では、職場に関する8つのテーマを解説した。第5回は「育児休業・介護休業」について――。(全8回)
父で93日、母で93日、複数回に分けて休める
年間10万人に及ぶ介護離職。誰にとっても他人事ではない。まだ老親が元気でも、将来を悲観している人も多いのではないか。そこで知っておきたいのが、「育児・介護休業法」だ。17年の1月に改正され、利用しやすくなったのをご存知じだろうか。背景には、介護離職が社会的に問題視され、今後さらに増えるのを防止するという政府の狙いがある。
まず大きく変わったのが「介護休業」を分割して取得できるようになった点。介護が必要となった家族1人につき、年間93日まで、3回を上限として複数回に分けて取ることができる。改正前は、原則93日以内をまとめて1回しか休めなかった。
「93日ではとても足りない」と思うかもしれないが、介護休業は、あくまで介護体制を整えるためのもの。自分で介護をするための休みだと誤解している人が多い。介護保険を申請する、介護サービス提供会社と契約するなど、介護の始期に必要な環境を整備したり、介護を続けていくなかで身体の状態が変われば体制を見直す必要がある。親と離れて暮らしていれば、帰省して手続きをする時間が必要だろう。そのための休業が法的に認められている、というわけだ。
「母の介護で93日取ったから、同じ年に父で93日取るのは無理か」という質問も多いが、そんなことはない。対象家族ごとに取得可能だ。また、父母や配偶者の介護だけでなく、子供、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫の介護にも利用できる。以前は、たとえば兄弟は同居でなければダメだったりと、制限が厳しかったが、現在はだいぶ条件が緩くなった。