親会社と子会社の給料格差は200万円以上
自動車業界は、雇用と経済の両面で日本を支える基幹産業である。今年は大きく3つの話題があった。
1つ目は、「クルマの電動化」だ。EV(電気自動車)やPHV(プラグインハイブリッド車)といった「電動車」の開発競争が脚光を浴びた。背景には温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」がある。フランスやイギリスはパリ協定を順守するための具体策として2040年までにガソリン車、ディーゼル車の販売を禁止する考えを明らかにしている。環境規制への対応は、今後の自動車業界にとっても重要な課題だといえるだろう。
2つ目は、「タカタ・ショック」だ。今年6月、欠陥エアバッグのリコール(回収・無償修理)問題で経営危機に直面した自動車大手部品のタカタが、民事再生法の適用を申請し、製造業としては戦後最大の経営破綻に追い込まれた。タカタ製の欠陥エアバッグは異常破裂により十数人の死者を出しており、問題のエアバッグは世界で約1億個がリコールの対象になっている。負債総額は1兆5024億円。東京商工リサーチによると9月6日時点の連鎖倒産はゼロだということだが、桁外れの倒産は日本の産業史に深い痕跡を残した。
3つ目は「不正問題」だ。昨年は三菱自動車とスズキで燃費データの不正問題だったが、今年は日産自動車とSUBARU(スバル)で、国に代わって新車の安全性をチェックする「完成検査」を無資格の従業員に検査させていたことが判明した。しかも、そうした不正は多くの工場では30年以上も「習慣」として続けられていたものだった。
今回、国交省は日産の工場への抜き打ち検査で、無資格検査の不正に気づいたという。これは職場環境に不満をもつ従業員による事実上の内部告発だったのではないだろうか。日産ではリーマン・ショック後の一時減産を理由に1万2000人規模の大リストラを断行したことで、一部の派遣・期間工の従業員との間で法廷闘争が続いていた。
日産の経営陣の高給ぶりはよく知られている。だが、国内で働く現場の社員同士でも、工場によって待遇に無視できない格差がある。日産の国内の車両組み立て工場は6カ所ほどだが、追浜と栃木工場以外は別会社になっている。国交省が最初に立ち入り検査を行った神奈川県平塚市の湘南工場は連結子会社の日産車体が保有。福岡県苅田町の九州工場は日産と日産車体の100%子会社がそれぞれ別々に工場を運営しているほか、京都工場は日産車体の100%子会社になる。
完成車・部品メーカーを含めた「輸送用機器」の平均年収ランキングでは、日産自動車は96社中5位となっている。平均年収816万円は完成車メーカーとしてはトヨタ自動車に次いで2番目。しかも、前年より21万5000円増えており、トヨタとの差は20万円以下も縮まっている。
ところが、湘南工場などで日産車を受託生産する日産車体は597万円で54位。前年より17万6000円減だ。親会社の日産とは200万円以上の差があるほか、その子会社はさらに下回ることも見過ごせない。