プレジデントオンラインでは全上場企業の「平均年収ランキング」を作成した。今回はそのうち電機メーカーなど「電気・精密機器」に分類される417社のデータを紹介する。「職務・役割給」制度の導入により、「同期」であっても数百万円の給与格差が当たり前だという実態とは――。

大卒総合職と工場勤務社員の賃金格差

電機業界の浮沈は激しい。韓国、中国などアジア勢の台頭によるグローバル競争にさらされている上に、商品サイクルはどんどん短くなっている。このため業績は変動しやすく、連動する形でボーナスが大きく増減し、年収も変わる。

また、ものづくり業界は大卒ホワイトカラーと主に高卒の工場の従業員との賃金格差が大きいため、ほかの業界に比べて平均収入は低くなりがちだ。たとえば25位で、事務機メーカーとしてはトップのリコーの平均年収は807万円(平均年齢43.5歳)だ。同社の40歳の大卒・総合職の社員は「基本給は約47万円ですが、家族手当など諸手当込みの月給は54万円。それに夏冬のボーナスの合計が320万円ぐらい。年収で970万円弱です。45歳ぐらいの課長職だとほとんどが1000万円を超えています」と語る。

それは37位のパナソニックでも同じだ。約5万7000人の従業員を抱えるが、その大半は高卒の工場の社員だ。平均年収は781万円(45.3歳)だが、大卒総合職の40~45歳の管理職クラスの標準年収は900~950万円。一方、工場勤務の40~45歳の現業職の社員の標準年収は480~530万円と、その差は大きく開いている。単純に平均年齢と同じ総合職950万円と現業職の530万円を足した平均は740万円。今回の「平均年収」にほぼ近い金額になる。

そうした中でも例外といえるのが精密計測機器メーカーのキーエンスだ。平均年収はトップの1862万円。同社はメーカーであっても生産設備を持たない「ファブレス経営」で知られる。社員の主力は営業職であり、設備関連費やそれに伴う労務費が少ない。営業利益率は50%強と高く、業界屈指の商品開発力が年収を引き上げている。

一方、「電気・精密機器」の417社で最下位となったのは293万円の平山ホールディングス(東京都港区)。業界トップのキーエンスとの年収差は6倍以上ある。同社は製造業の製造請負、製造派遣、人材紹介などを行う人材派遣会社で、17年6月期のグループ売上高は116億円。17年3月に持ち株会社に移行したが、平均年収は持ち株会社化する前の旧・平山の数字となっている。

年収激減の東芝、シャープは経営再建中

電機業界の浮沈を象徴的に示しているのが、86位の東芝と153位のシャープだろう。東芝は不正会計事件や原発子会社の巨額損失などで企業存続の瀬戸際まで追い込まれた。平均年収は前年比117万円マイナスの711万円。春闘の賃上げのリーディングカンパニーだった面影はすでにない。

東芝は、不正会計事件以降、医療機器事業など主力事業を相次いで売却する一方、グループ全体で約3400人の人員を削減し、現在もグループの東芝デジタルソリューションズのリストラを実行中だ。このため業界他社だけでなく自動車会社なども、東芝の技術系社員の引き抜きを進めている。