ヤマト運輸が顧客からの仕事を抑制しなくてはならないほど、物流運輸業界は人手不足にあえいでいる。この状況は解消できるのか。物流運輸業界に詳しいBCGのコンサルタントは「10年後には24万人のトラックドライバーが不足する」とさらなる深刻化を予測する。そうなれば「時間指定の再配達」などのサービスも続けられなくなる――。(前編、全2回)

「働き方改革」でますますドライバーが必要に

現下の物流業界にとって最大の経営課題が、トラックドライバー(以下、ドライバー)を中心とする人手不足である。この課題を解決するには、まず現在の人手不足が将来どう変化するのかを把握する必要がある。

そこでボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)では、政府や関係機関等が発表している各種統計調査を総合し、10年後の物流運輸業界におけるトラックドライバーの需給がどう変化するか、を予測した。その結果は、運輸業界にとっては深刻なものとなった。現在のドライバー数は約83万人。今後10年間でドライバーに対する需要は約96万人にまで拡大する一方で、供給は約72万人に止まる。需給差を計算すると、実に24万人もドライバーが不足してしまう(図表1)。

ではなぜ、これほどまでドライバーが不足するのか。まずドライバーに対する需要予測から説明しよう。

予測で重要なのは、何が需要に影響を与えるかを特定することだ。ここでは「荷物量の増減」「積載効率の低下」「モーダルシフトの進展」「規制緩和による代替(バス・タクシーの混載輸送)」「再配達の減少(宅配ボックス・ロッカーの普及)」「幹線の自動運転化」「労働環境改善」という7つの要素に分けて分析した(図表2)。

このなかで、影響力が大きいのは「労働環境の改善」である。人手不足が著しい宅配などの運輸業・郵便業では、長時間労働が蔓延している。厚生労働省の労働統計要覧によると、産業全体で月あたりの平均労働時間が143.7時間なのに対し、運輸業・郵便業では171.2時間にのぼっている。

長時間労働の蔓延に対して、政府・企業共に「働き方改革」を推進している。大手運送会社では2025年までにフルタイマーの超過労働時間を50%削減する目標を発表した。仮にこれが業界全体で実施されたとすると、ドライバー数に換算して、約9万人の需要増につながる。