ネット通販の取扱量急増で、ヤマト運輸の現場が悲鳴をあげている、という報道が先ごろあった。同社の労働組合から取扱量抑制の要求に対して、会社側は売り上げ減少を覚悟で検討を始めたという。買い物はオンライン化・バーチャル化しても、物流は相変わらず人が担っていることをあらためて思い知らされるニュースだ。
しかし、30年後から現在を振り返ったとき、「そんなニュースもあったよね」と懐かしく思えるかもしれない。その頃、ネット通販で買った商品は、おそらく無人の自動運転車両(小型の輸送ポッド)で購入者の家に配送されているからだ。
課題は技術よりも「人間側のルールづくり」
無人の自動運転車と聞くと、未来の乗り物のように聞こえるが、AI(人工知能)やディープラーニング・ソフトウェアの急速な進歩により、技術的には、実用化レベルにかなり近い段階まで来ている。むしろ、自動運転車が公道を走れるようになるかどうかは、車の技術的課題よりも、製品の安全基準や交通規則・法律、免許制度、事故が起きたときの保険制度をどう整備するかといった「人間側のルールづくり」の課題のほうが大きいようだ。
昨年刊行された、コロンビア大学機械工学教授のホッド・リプソンと科学ライターのメルバ・カーマンによる著書『ドライバーレス革命(原題:Driverless、邦訳は日経BP社)』では、自動運転車の普及における課題、自動運転技術の最新状況、自動運転車が社会に与えるインパクトが詳細に描かれている。
自動運転車に関しては、いつごろ導入されるのか、安全性は確保されるのか、トラックやタクシー運転手は失業するのか、事故が起きたらどうなるかなど、さまざまな疑問を持っている人も多いだろう。
そうした疑問にこの本はどう答えているのか。今回のテーマは「自動運転車はいつ導入されるのか?」。
最初にお断りしたいのだが、この質問にはピンポイントで○○年とは答えられない。なぜなら、自動運転車は段階的に導入されると予想されるからだ。すでに、鉱山や農場では、自動運転車両が使われている。市街地であっても、特定の地域に限っての運用であれば、比較的早期に導入される可能性はある。