桜の時期を過ぎると、すぐにゴールデンウイークがやってくる。すでに旅行の計画を立てている人も少なくないだろう。ゴールデンウイーク中の高速道路の渋滞は、もはや風物詩のひとつだ。NEXCO中日本によると、東京に住んでいる人の場合、今年は4月29日の下り方面が、混雑のピークになるという。ドライバーにとっては気の重い話だが、運転手不要の自動運転車(ドライバーレス・カー)が主流になる時代が来れば、いちいち渋滞情報を気にしなくてもすむようになるかもしれない。
コロンビア大学のホッド・リプソン教授は、著書『ドライバーレス革命』(M・カーマンと共著、日経BP社)で、近く訪れるであろう自動運転車社会で何が起きるかが、リアルに描いている。渋滞のない社会は本当に実現できるのか。
プラトゥーニングで渋滞知らず
そもそも渋滞はなぜ起きるのか。その主な原因はブレーキや速度低下にある。車の走行台数が多いときに、先頭集団の1台が何からの理由(前に割り込まれた、など)でブレーキを踏むと、後続車が次々とブレーキを踏み、その影響が波状的に広がり、後方で渋滞が発生する(先頭車が登り坂やカーブにさしかかり速度を落としても、同様のことが起きやすくなる)。
自動運転車の場合、速度を一定に保てるうえ、複数台が車間をつめて列車のように一群となって走行する「プラトゥーニング」が可能になるため、こうした心配がなくなる。しかも、トラックなどの大型車なら、プラトゥーニングによって風の抵抗を抑えることができ、燃費向上も見込める。
<テキサス大学の研究者は、米国の路上を走る車の90パーセントが自動運転車になれば、道路の容量が2倍になったのと同じ効果があると推計している。また、車間をつめて走ることで、渋滞による遅れが、幹線道路で60パーセント、郊外の道路で15パーセント軽減されるという。とりわけトラックは風の抵抗を強く受けるため、燃料効率が悪くなりがちだが、自動運転により1メートル以下の車間でプラトゥーニングをすれば、1台あたり15~20パーセントも燃料消費を抑えられる。>(『ドライバーレス革命』より)
あくまでも「車の90パーセントが自動運転車」という前提での話だが、自動運転車しか走れない「専用道路」を造るなど、自動運転車の普及率が低くても効果を存分に発揮させる方法はあるはずだ。
渋滞に捕まればアイドリングの時間も長くなり、排出ガスの増加によって環境にも負荷を与える。米国では混雑や渋滞によって、年間110億リットルものガソリンが無駄に消費されているという。こうした無駄の軽減も見込める。