ヤマト運輸が顧客からの仕事を抑制しなくてはならないほど、物流運輸業界は今、空前の人手不足にあえいでいる。有効な打ち手のひとつは「配送料の値上げ」だ。しかし物流費があらかじめ「希望小売価格」に含まれているなど、不透明な取引制度が立ちはだかっている。どうすればいいのか。物流運輸業界に詳しいBCGのコンサルタントが解説する――。(後編、全2回)

SCMの抜本な効率化に欠かせない異業種間の共同配送

弊社の予測では10年後にトラックドライバー(以下、ドライバー)が24万人不足する。この空前のドライバー不足を埋めていくには、対症療法的な対策では全く解決できない。垣根を越え、荷主の協力を得ながら業界全体で対策を打ち出していく必要がある。具体的に言えば、それはサプライチェーンマネジメント(SCM)の抜本的な効率化である。B2B2C(企業対企業対消費者)とB2B(企業対企業)の2つに分け、そのカギがどこにあるのか示したのが図表1である。

B2B2Cの場合、工場で作られた商品は卸、小売を通って消費者へと届く。この流れで考えられる打ち手のひとつは「共同配送」を推し進めていくことだ。とはいえ、企業グループ内に関して言うと、物流に関してはすでに協調領域という認識が一般的であり、共同配送はかなり進んでいる状態だとも言える。したがって、もう一歩踏み込んで効率化を進めようとすれば、異業種間の共同配送を実現すべしということになる。

例えば1年間を通じて販売されるが、季節変動は異なる商品──夏によく売れるものと冬によく売れるもの──を1年間通して混載して配送すれば、物流全体として非常に安定する。また、重い飲料水の上に軽いが体積のある即席麺を載せて運ぶなど、重量と体積の関係が異なるものをうまく組み合わせて運ぶことができれば、重量または体積のどちらかの制約で積載できないことを減らし、積載効率をあげることができる。

共同配送を進めやすい条件としては、(1)物流コストの価格転嫁が難しいこと(2)単一メーカーでは荷物量が少ないことが挙げられる。

実際、このような異業種配送は日本でもすでに始まっている。その一例が味の素、カゴメ、日清フーズ、ハウス食品グループ本社の4社が均等出資して発足した「F-LINE」だ。食品物流が抱える課題に対応するため、既存の枠組みを超えて合弁会社を作り、2017年3月から事業を開始している。

共同配送に発着地を組み合わせるやり方もある。これを推し進めていく大きなメリットは、ドライバーの労働環境改善にもつながる点だ。東京-大阪間で荷物を運ぶ場合、東京発・大阪発の荷物を組み合わせ、中間地点の静岡などで積み荷を入れ替えることができれば、ドライバー一人あたりの走行距離や労働時間を大幅に減らせる。長距離ドライバーが東京-大阪間を往復するとしたら1泊2日かかってしまうところを、リレー方式にして途中で積み荷を交換できるようになれば、ドライバーは日帰りできるようになるからだ。