子どもにとっての母親は“すごい人”に
博報堂生活総合研究所は今年、子ども(小4~中2)を対象とした大規模調査「子ども調査2017」を実施しました。この調査は20年前の1997年から同じ調査設計、項目で実施されている長期時系列データ(ロングデータ)です。この連載では、ロングデータの分析から見えてくる20年間で起こった子どもたちの変化と、同時に実施した家庭訪問調査や小中学校の先生などへの取材から、今、子どもたちに生まれている新しい価値観や生活行動について解説していきます。
連載第2回では、子どもたちと両親の関係に焦点を当てます。博報堂生活総研が今年実施した「子ども調査2017」によれば、子どもたちが親に対して持つ印象は、このところ大きく変化しています。
父親、母親それぞれについて「尊敬する人」「友達のような人」「どうでもいい人」のいずれかを選んでもらう問いの中で、97年の段階では父親を「尊敬する」と答えた子どもが約6割と、母親(5割強)を上回っていました。
しかし17年の調査では、父親の尊敬度が横ばいであるのに対し、母親を「尊敬する」と答えた子どもが7割近くにまで増え、父親を逆転。母親を「友達のような人」と答える子どもが減り、その分「尊敬する人」と答える子どもが増えた形で、母親は“親しみやすい人”というだけでなく“すごい人”だと思われるようになっているのです。この変化には、いったいどのような背景があるのでしょうか。
家でも会社でも働く母親たち
かつての日本の家庭では「働く夫と専業主婦」による世帯がモデルケースとなっていました。しかし、厚生労働省「厚生労働白書」によれば、第一回の子ども調査を実施した1997年の段階で、すでに共働き世帯の数が専業主婦世帯の数を追い抜いています。
1990年生まれの私はこの頃小学校に入学したのですが、フルタイム勤務の母親はまだ少なかったものの、パートタイムで働いているという話はそれほど珍しくなかったように記憶しています。共働き世帯はその後、いったん減少したものの再び増加に転じ、最新の2016年では共働きの世帯数が専業主婦世帯の1.7倍にまで増加しました。
こうした傾向は中学生の子どもの母親ではさらに顕著で、厚生労働省の調査「第14回21世紀出生児縦断調査(2015年、14歳の子どもが対象)」によれば、フルタイムで働く人が2割、パート・アルバイトが5割、自営業・自由業などが1割と、8割がワーキングママ。もはや専業主婦は2割しかいません。
また、学歴も上昇しています。文部科学省の統計によれば、1997年に女性の大学進学率は26%でしたが、2017年では50%と約2倍にまで伸び、男性との差は過去最低の7ポイントまで縮まっています。仕事も学歴も、男性と遜色のない女性が増えているのです。