「限定承認」という相続方法もある

「また、相手が兄弟姉妹だと、口約束だけで借用書がないこともよくあります。そうすると家族も『お金を貸していたというけど本当なのだろうか』と、どうしても疑心暗鬼になりがちです。いったんそうなると関係がギクシャクして、人間関係にも支障をきたすようになります。私は公認会計士として、これまでそういう場面に何度も遭遇してきました」(税理士 佐野明彦氏)

そこで、佐野氏がお勧めするのは、生きている間に返済できないとわかったら、親に自己破産しておいてもらうことだ。そうすればとりあえずマイナス財産がないことははっきりする。それが無理だというのなら、せめて家族にはこれくらいの借金があるということを伝えておいてほしいと訴えよう。

しかし、人間はどこかで死んだら終わりという意識があるので、高齢になればなるほど自分の恥になるようなことは口にしないから、年老いた親から借金の有無や額を聞き出すのは、現実にはかなり難しい。

では、親の残した隠れ借金に、子供はどうやって対処すればいいのだろう。

「次から次へと債権者が出てきて、借金の総額がいくらになるかわからないような場合は、『限定承認』という相続方法をとることができます。簡単に説明すると、プラス財産の範囲内でマイナス財産を相続するのです。ただし、『相続放棄』と違って、どこにどれくらい借金があるのか一つ一つ確認しなければならず、事務処理も煩雑になるため、弁護士はまずやりたがりません」(佐野氏)