要介護度が違う両親への対応

親の介護は大変だ。とはいえ、どこがどのように大変なのかは、実際にはじまってみなければわからない。私の知っているケースでは、両親の「要介護度」が違ったことが仇になった。

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ご存じの通り、要介護度は身体の状況や、それによってどれくらいのサポートが必要かなどで決まる。たとえば、食事や衣類の着脱などは1人でも問題ないが、入浴や排せつの一部で介助が必要な場合は「要介護度1」。生活全般にわたって全面的な介助が必要な、いわゆる「寝たきり状態」の場合は「要介護度5」ということになる。

そして、厄介なことに2015年の介護保険制度の改正で、特別養護老人ホームに入所できるのは原則として「要介護度3」以上の人となってしまった。その他の介護施設においても、施設ごとに「うちは要介護度3以下の人しか入所できません」「要介護度5の人専門です」などと基準を掲げている。同じような状態の人をまとめて入所させたほうが、施設側にとって楽だからだ。

となると、要介護度が著しく違ったり、どちらかに認知症の傾向があったりすると、同じ施設に入所するのは難しくなる。そこから家族の苦悩がはじまるのだ。

見舞いが辛くてうつになる人たち

たとえば父親が「要介護度2」で、母親が寝たきりの「要介護度5」の場合、2人が同じ施設に入所するのは難しい。とはいえ、父親を1人で家に置いておくのも心配……と別々の施設に入所させたとしよう。

すると、見舞いに行く家族は、まず実家で両親の荷物をピックアップし、次に父親の施設に行き、母親の施設に行くということになる。実際、2つの施設が遠いこともあるし、そもそも実家から離れていることもある。そうなれば本当の「大移動」だ。肉体的・経済的負担は計り知れない。

それだけならまだいいが、これらの負担が心を蝕むこともある。結局、介護疲れからうつになってしまった人も大勢いるのだ。だからこそ、私は言いたい。頼れるものは頼ること。そして、「自分は冷たいんじゃないか」などと思わず、親の世話はアウトソーシングすること。

『ルポ介護独身』(新潮新書)の著者で、多くの介護者の取材をしてきたルポライターの山村基毅さんも言っている。「もう無理だ、限界だと感じたら、親を放り出してもいいと思うんです」と。自分が倒れたら、本当にすべてが瓦解してしまうからだ。