私は好きでこういう生活をしていますが、もちろん良いところも悪いところもあります。参考までにいくつかご紹介します。まずはメリットから。

(1)より早く季節を知る

例えば1月の半ばに、散歩の途中で他人の家の庭を眺めて、梅がほころび始めていたり、窓から差し込むひだまりにかげろうが立ち上っていたりするのを見ると、誰よりも先に季節を先取りしているようなお得感があります。四季の中でも特に、長く厳しい冬が終わって春がそこまできているという実感は格別です。

摘んできたフキを炒めて食卓に(写真:著者提供)

都心で働きまくっていたときは、気がついたら桜が散っていた、という感じだったので、こうした余裕はかけがえのないものです。

(2)お金に対する依存が減る

お金が使えないと、自分でやらなければならないことが増えます。すると、強制的にお金に頼らず済まさざるを得ません。

散髪は市販のバリカンを使って自分で切りますし、高い化粧水の代わりに質のいいエクストラバージンオリーブオイルをお風呂あがりに塗っておけば、肌をダメージから防げます。

お金に頼らなくても自分でできることや代用品がたくさんあると知るのは、お金に対する依存度を減らすことにつながり、精神衛生上とても良いです。

(3)他人を助ける心の余裕ができる

収入が少ないので、金銭的に助けることはできませんが、時間がありあまっているので、ちょっとした助けがたくさんできます。

例えば、友人の引っ越しや看病を手伝えるとか。街中でも、店の券売機の前で困っているご老人に使い方を教え、ベビーカーを持ったまま階段を下りようとしている母親に手を貸すなど、しょっちゅうです。

働きまくっていた時は、こんな些細なこともできなかった。自分だけがつらいような気がして、街中で困っている人がいてもほぼ無視していました。自分の生活だけで精いっぱいなんだから、みんな自分でなんとかしろ、と。

今は損得など度外視で、さっと助けることができますし、「助けたら損」みたいに考えていたあの頃のギスギスした心情には、できれば戻りたくないと思います。