鹿1頭の超おすそ分け文化で、生活費は月10万円そこそこ
「本山町を含めた高知県の嶺北地域の『おすそ分け文化』は、はんぱじゃないんです。『畑にできたものを、いつでも採って食べていいよ』といわれたり、山で獲った鹿を1頭丸ごといただくこともあります。こちらに来てから、解体作業も覚えました」
笑みを浮かべながら話すのは、「まだ東京で消耗してるの?」のブログを主宰するブロガーのイケダハヤトさん。
1986年生まれのイケダさんは、2014年6月に高知市内へ妻のミキさん、子ども1人と移住し、15年6月に市内から車で1時間ほどの本山町にある滞在型市民農園「クラインガルテンもとやま」へ移り住んだ。約42平方メートルの家屋のほかに農地も用意され、家屋の借り賃は月額3万3000円強。それでも新築のため割高で、イケダさんの後輩移住者の林利生太さんが運営するシェアハウス「ハヤシはうす」は、築100年以上の7LDKという大きな洋館で家賃が月3万円だ。普通の家なら1万円台がザラという。
1人当たり課税対象所得●230.1万円 総人口●4,103人 待機児童数●0人 小売店数●61店 一般診療所数●2カ所
イケダさんが移住を考えるきっかけになったのが娘さんの誕生である。夫婦共働きで、娘さんを保育園に預ける必要があったのだが、当時住んでいた東京・多摩市では近所の希望する保育園に入れることができなかった。離れた保育園に入れると、送り迎えのためにミキさんは時短勤務を強いられる。
そこで、田舎に移住した友人を訪ね歩いたりしながら、国内各地での最適な移住地探しを始め、最終的に相性のいい土地が高知だった。山や海からの恵みに富み、南国気質で土地の人の気質はおおらか。なによりイケダさんが魅了されたのが「酒飲み文化」が定着していることで、お昼から飲んでいても、ほとんど咎められることがない。
でも、なぜ高知市内から本山町へという、2段階もの手間のかかる移住をしたのだろう。実は、その疑問に対するイケダさんの回答に、ハッピーな移住を成功させる秘訣がある。
「いくら寛容な皆さんでも、いきなりよそ者が入り込んだら、抵抗感を覚えますよね。個々人の生活が確立・尊重されている都市部にまず住んで、周りの田舎に何度も通って相性の確認とともに、自分たちのことを知ってもらう。転職で何度も面接を重ねてお互いの相性を確かめるのと同じです」